異文化を深く知り、自分の「当たり前」を見つめ直す
気候変動で水没の危機にある島
近年、気候変動などの自然環境の問題が関心を集めていますが、世界の全ての人々が同じようにとらえているわけではありません。例えば、オセアニアの島国・ツバルは海面の上昇によって水没が危惧されていますが、それは私たちとは異なった意味で大きな問題なのです。
環境問題の神学?
ツバルの離島で行われた調査では、海面が上昇したと思うか尋ねると、多くの人がこの島は神に祝福されており、神が沈めるわけがないと回答しました。島が沈むことは文字通り起こってはならないことですが、もし起こるとしたら、それはどのように解釈しうるのかを神学的に議論する牧師もいました。
環境問題を神学的にとらえることに違和感を覚えるかもしれません。しかし、日本でも、てるてる坊主をつくったり、雨乞いの儀礼をしたりしてきました。天気をはじめとする人知を超えた自然が信仰と結びつくのは、日本もツバルも共通しているかもしれません。
そう考えると、気候変動を単なる自然環境の問題としてのみとらえるのは視野が狭いでしょう。人々は神学的な言葉で用いて説明してくれましたが、気候変動は島と密接に結びついた彼らの〈生〉への脅威であり、自然環境という狭い領域の問題ではないのです。
自分の前提を疑う
文化人類学で大切なのは、異文化を理解するだけではなく、それを通して自分の前提を疑ってみることです。それによって私たちは他者から重要なものを学ぶことができます。例えば、ツバルは後発開発途上国に含まれますが、豊かな自然の恵みとそれを共有する島のやり方が生きていて、想像以上に食べ物と笑いに満ちた豊かな暮らしをしています。しかも、彼らはあまり国家や市場に頼ることなく、暮らしを維持することできます。国家や市場が機能不全に陥った時、私たちは生きていけるのかと考えると、ツバルからレジリエンスが高く、持続可能な社会のあり方のヒントを得ることができるでしょう。
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東京経済大学 コミュニケーション学部 国際コミュニケーション学科 准教授 小林 誠 先生
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