講義No.12533 土木・環境工学 環境学 理工系その他

水災害対策の方針転換! 被害を最小限に抑えるまちづくり

水災害対策の方針転換! 被害を最小限に抑えるまちづくり

水災害対策の変化

近年、地球温暖化による気候変動などの影響で豪雨災害が増えています。今後の危機に備えるため、日本では2020年に河川整備の方針を大きく転換しました。従来は、川から水をあふれさせないような堤防やダムの整備に力を入れていました。しかしそれだけでは防げない災害が予想されるため、新たに「流域治水」という対策を打ち出したのです。川から水があふれることもあるという前提で、被害を最小限にするための方法を考えるというものです。

被害を最小限にするには?

河川の氾濫について考える水工学の分野では、水災害が起きたときの被害シミュレーションや、災害に強いまちづくりの方法といった新たな研究が始まりました。例えば、国が管理する北陸地方のある川を対象として、この川が氾濫した場合の浸水規模と、影響を受ける住民の数や農地の面積などをシミュレーションした結果、対策をしないままでは経済的にも大きな損失が出ることがわかりました。もし、氾濫した水をコントロールする対策を実施したり、川の近くなど浸水リスクの高い場所に住む人々や施設が移転できれば、川が氾濫しても経済的な損失を大きく軽減できる可能性があります。

災害に強いまちをめざして

また、水災害の被害を防ぐために、人口減少を逆手にとったまちづくりも検討されています。人が住まなくなった土地を再開発し、比較的安全な場所に住居などを集中させれば、浸水リスクの高い場所から人を遠ざけられるでしょう。しかし、安全な場所があっても住民が移転したいと思わなければ実現は困難です。例えば都市計画において、リスクの高い場所は開発を抑制し、安全な場所は市街地の割合を多くして利便性を高くするなどの方法が考えられます。また、人口減少で学校を統廃合するときは、学校を安全な場所に移転させることで、その学校周辺に住居が集まるようなる傾向があります。地域の魅力を高めて、水災害リスクの低い地域への移転を自然に促進できるようなまちづくりの研究が今後も求められます。

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先生情報 / 大学情報

金沢大学 理工学域 地球社会基盤学類 教授 谷口 健司 先生

金沢大学 理工学域 地球社会基盤学類 教授 谷口 健司 先生

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水工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

何事にもおもしろがって取り組んでほしいです。私もさまざまな分野に興味を持って手広く学んできた結果、やりがいのある研究テーマに出会えました。こだわりを持つことも大事ですが、なんでもおもしろがれる感覚も持っていると、将来どのような道に進んでも楽しめます。例えば大学で希望通りの研究テーマを扱えなかったとしても、与えられたテーマに精一杯取り組んでいるとおもしろさを見つけられることがあります。最初から「つまらない」と偏見を持つよりも「楽しんでみよう」と思ったほうが、豊かな景色が見えてきます。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

金沢大学に関心を持ったあなたは

金沢大学は150年以上の歴史と伝統を誇る総合大学であり、日本海側にある基幹大学として我が国の高等教育と学術研究の発展に貢献してきました。本学が位置する金沢市は、日常生活にも伝統文化が息づき、兼六園などの自然環境に恵まれ、学生が思索し学ぶに相応しい学都です。江戸時代から天下の書府とも呼ばれ、伝統の中に革新を織り交ぜて発展してきた創造都市とも言えます。「創造なき伝統は空虚」との警句を胸に刻み、地域はもとより幅広く国内外から来た意欲あるみなさんが新生・金沢大学への扉を共に開くことを期待しています。