水災害対策の方針転換! 被害を最小限に抑えるまちづくり
水災害対策の変化
近年、地球温暖化による気候変動などの影響で豪雨災害が増えています。今後の危機に備えるため、日本では2020年に河川整備の方針を大きく転換しました。従来は、川から水をあふれさせないような堤防やダムの整備に力を入れていました。しかしそれだけでは防げない災害が予想されるため、新たに「流域治水」という対策を打ち出したのです。川から水があふれることもあるという前提で、被害を最小限にするための方法を考えるというものです。
被害を最小限にするには?
河川の氾濫について考える水工学の分野では、水災害が起きたときの被害シミュレーションや、災害に強いまちづくりの方法といった新たな研究が始まりました。例えば、国が管理する北陸地方のある川を対象として、この川が氾濫した場合の浸水規模と、影響を受ける住民の数や農地の面積などをシミュレーションした結果、対策をしないままでは経済的にも大きな損失が出ることがわかりました。もし、氾濫した水をコントロールする対策を実施したり、川の近くなど浸水リスクの高い場所に住む人々や施設が移転できれば、川が氾濫しても経済的な損失を大きく軽減できる可能性があります。
災害に強いまちをめざして
また、水災害の被害を防ぐために、人口減少を逆手にとったまちづくりも検討されています。人が住まなくなった土地を再開発し、比較的安全な場所に住居などを集中させれば、浸水リスクの高い場所から人を遠ざけられるでしょう。しかし、安全な場所があっても住民が移転したいと思わなければ実現は困難です。例えば都市計画において、リスクの高い場所は開発を抑制し、安全な場所は市街地の割合を多くして利便性を高くするなどの方法が考えられます。また、人口減少で学校を統廃合するときは、学校を安全な場所に移転させることで、その学校周辺に住居が集まるようなる傾向があります。地域の魅力を高めて、水災害リスクの低い地域への移転を自然に促進できるようなまちづくりの研究が今後も求められます。
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先生情報 / 大学情報
金沢大学 理工学域 地球社会基盤学類 教授 谷口 健司 先生
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