自分らしい生き方の実現のために 主体性を醸成する支援とは?
途上国の女性を取り囲む状況
途上国に暮らす「貧困層」と言われる女性の多くは、多くの場合さまざまな抑圧を社会から受けています。その状況が「当たり前」になり、自分の生き方を自分で決めていいと思えないような場合も多くあります。そもそも「自分らしく生きたい」「状況を変えたい」と思えるには、自己肯定感が必要です。また、自分らしい生き方の実現に向け、周囲と協力して働きかけたりする力も必要です。これらの力を育むことは「エンパワーメント」と呼ばれており、主体的な生き方を実現する上で欠かせません。よって、「社会的弱者」と言われる人々がエンパワーされ、当事者自身が主体的に生きられるようなコミュニティを作るための研究が色々な学問領域において行われています。
戦後日本の農村女性への支援
エンパワーメント支援の参考にされているものの一つが、戦後日本の事例です。戦後の日本では、特に農村に住む女性たちが、途上国の女性と同じように厳しい環境に置かれていました。しかし、主体性形を育むような支援がある事例も多いと言われています。中でも注目されているのが、GHQの指導で行われた生活改善運動です。農家に嫁いだ若い女性たちは、生活改良普及員の支援のもと、暮らしを少しでも楽にするための活動に取り組んでいきました。
グループ活動で主体性を
生活改善運動の一環で、かまどの改良に取り組んだグループがありました。熱効率が悪く病気の原因とされていたかまどからの煙を減らし、健康で効率よく料理ができる台所を生み出そうとしました。そのグループは運動が進むにつれて、野菜を加工して販売したり、加工プロセスを改良したり、身近な資源をうまく活用して経済力をつけていったこともわかりました。中には家庭内の活動に留まらず、地域コミュニティでリーダーになった女性もいます。女性たちはグループ活動を通して自己肯定感を高め、さらに周囲に働きかける力も伸ばしていきました。このような戦後農村女性の活動事例は、今日の途上国のエンパワーメント支援の参考になっています。
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先生情報 / 大学情報
横浜国立大学 都市科学部 都市社会共生学科 准教授 佐藤 峰 先生
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