人生に広く関係する「労働経済学」とは
1990年代から言われている「置き換え効果」
日本社会は世界一のスピードで高齢化が進んでいます。高齢化は、企業の雇用にも影響を及ぼしています。1990年代から、企業の定年が延びるなど社員の高年齢化が進むと、若い社員の採用が減るのではないか、ということが指摘されていました。こうした現象を経済学では「置き換え効果」と呼んでいます。置き換え効果が生じる背景の一つに高年齢者の人件費の高さが指摘されてきました。経済学では、こうした理論や仮説が正しいのかデータに基づいて実証的に解明することを重要視しています。大企業サンプルを用いた実証分析から、置き換え効果は確認できるものの、人件費の負担による影響は少なく、原因の解明にはさらなる分析が必要であることがわかってきました。
男女の賃金格差の要因は?
労働市場について経済学的に考える学問を「労働経済学」と呼びます。さまざまな現象を経済原理や合理性に基づいて説明しますが、近年は心理学的要素も加味するようになってきています。例えば、日本の労働市場では、女性の管理職がまだまだ少なく、賃金も男女差が大きいという事実があります。これは、企業側の意識や対応に問題があると考えられてきましたが、一方で、男性に比べ、女性は昇進をあまり望まないということもわかってきました。労働経済学のこうした研究は、企業側と労働者側の双方から考えていくことの重要性を示しています。
教育を考え、労働を考える経済学
労働経済学の隣接分野としては、教育を経済学的に考えていく「教育経済学」という学問もあります。教育水準はその後の労働市場でのパフォーマンスに大きな影響を与えます。特に、就学前教育の重要性に注目が集まっています。このように、労働経済学と教育経済学は互いに関連し合っています。労働経済学は、広い意味では、人生を有意義にする学問であるといえるでしょう。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
東京経済大学 経済学部 教授 安田 宏樹 先生
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