モンスーン気候とアジアの農業の関係

モンスーン気候とアジアの農業の関係

モンスーン気候とアジアの農業

モンスーン気候とは、強い季節風に支配される気候で、一般に海から湿った風が吹く夏に雨期となり、風向きが変わる冬には乾期となります。モンスーン気候下にある東南アジア・南アジアでは、高い気温と豊富な水が栽培の条件となる稲作が農業の中心になっています。しかし、ひとことでモンスーン気候といっても、場所によって農業との関係は多様です。東南アジアのなかでも、北ベトナムでは冬にシベリア高気圧の影響を受け、かなり気温が下がり日照時間も減少しますが、夏の品種とは違う、気温が低く日が照らない気候に適応した品種の稲を栽培して二期作を行っています。

気候変動による農業への影響

モンスーンの雨が少ない年には、稲作は干ばつの被害を受けてしまいます。しかし、ここで興味深い現象があります。インドの隣にあるバングラデシュは洪水が多い国です。それは、この国がガンジス川などの大河の下流域にあるからです。この国でも乾期に水が得られるところでは、雨期と乾期に二期作が行われるのですが、雨期にはひとたび洪水が起こって稲が水に浸ってしまうと、その稲はダメになってしまいます。ところが、その後に来る乾期には非常にたくさんの稲が収穫できるのです。

気候の変動に適応できる社会を

バングラデシュは大河の下流域にあるので灌漑(かんがい)が比較的容易です。そのため、雨水に頼る農業とは違う形に農業が変化し、今では乾期の米の収穫量が一年のうちで最も多くなりました。大洪水の被害を何度か経験するたびに、バングラデシュでは灌漑を増やし、乾期に稲作をするように変化してきたのです。それには30年ほどの年月がかかりましたが、乾期に稲を育てられるようになったことで、気候変動の影響を抑えられるようになりました。
気候変動は、地球温暖化などの人的な影響があってもなくても、一定の幅で必ず起こります。適応力の弱い社会だとその変化に対応できません。気候や気象の研究が進むと、変化に備えることによって適応力をもつ社会をつくることにも役に立つのです。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 都市環境学部 地理環境学科 教授 松本 淳 先生

東京都立大学 都市環境学部 地理環境学科 教授 松本 淳 先生

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地理学、気候学、農学

メッセージ

私が初めて調査に行ったバングラデシュやインドでは、字も地図も読めない人が英語を流ちょうに話していました。英語はアジアで広く使われている言葉なので、あなたも科学や文化を英語で議論できるぐらいになってください。日本人は漢字、ひらがな、カタカナと3種類の文字を使いこなす語学の天才です。英語もちゃんとできるはずなのですが、話す機会が少ないために難しく思えてしまうのです。日本はアジア最初の先進国として指針を出していく立場にあります。それを考えられるようになるためにも、基礎的な力を幅広く身につけてください。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東京都立大学に関心を持ったあなたは

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