人工知能の発展は、「仕事」「暮らし」「社会」をどう変える?
人工知能の急速な発展と「深層学習」
近年、大変な盛り上がりを見せている人工知能(AI)ですが、その発展を牽引(けんいん)しているのが、「深層学習(ディープラーニング)」です。深層学習は、古くからあるニューラルネットワーク技術の発展形です。深層学習が可能になったのは、3つの技術が進歩して機が熟したためです。1つは、インターネットにより「ビッグデータ」と呼ばれる大量のデータを取得しやすくなったことです。次に、コンピュータの性能が向上したこと、最後にアルゴリズムの進化です。
深層学習は何が新しいのか
深層学習を活用した応用の範囲は広く、人間の最強棋士に勝利した囲碁ソフトを筆頭に、言語翻訳や、画像認識、音声認識の高性能化、音声合成の高品質化など、多くの分野で顕著な成果を挙げ始めています。最も私たちを驚かせたのは、深層学習は「特徴表現」さえも学習できることでした。以前は、対象を認識する際に注目すべき特徴は何かを人間の手で設計していましたが、深層学習ではコンピュータ自らが、特徴をとらえることが可能になりました。
この結果、コンピュータが自ら「概念」を獲得できるようになったのです。また、強化学習と組み合わせることにより、コンピュータが膨大な数の試行錯誤を繰り返し、新しい戦略を自ら編み出すこともできるようになりました。もう、人間が手取り足取り教える必要はないのです。
AIの進化で人間はより創造的になる
人間の一部の知的作業はAIによって置き換わると考えられています。すでにAIは、マーケティング、金融、医療、交通、事務などに使用されています。さらには、人事評価や企業経営にも使用されようとしています。人工知能の普及により、産業構造や就業構造が大きく変わると予想されています。「仕事が奪われるのでは」と心配する人もいますが、むしろAIに任せられるものは任せて、人間はより創造的で、ひらめきが必要な仕事に集中できるようになるでしょう。AIは人間の進化のよきパートナーとして、共に発展することが望まれているのです。
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先生情報 / 大学情報
近畿大学 産業理工学部 情報学科 准教授 勝瀬 郁代 先生
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