人も企業も社会も幸せになるために 経営学で考える「労働CSR」
ブラック企業と社会
従業員に対して長時間労働や無理なシフトを強いたり、パワハラによって精神的に追い詰めたりする「ブラックバイト」や「ブラック企業」の問題は、今でも度々取り沙汰されます。企業が人の管理を適切に行わないことは、その企業だけの問題ではなく、社会全体にも悪い影響を与えます。例えば企業がむやみに人を解雇すると失業率が上がり、社会保障にかかる負担の増大や犯罪率の上昇もあり得ます。逆に企業が人を厚遇すれば、雇用が安定することで経済に良い循環が生まれたり、心身に不調をきたす人を減らしたりすることにもつながります。
労働CSR
企業が人を管理するうえで社会に対して与える影響について責任を負うことを「労働CSR」といいます。日本の企業は環境問題への取り組みにおいては世界でも先進的といえますが、労働CSRについてはまだまだ不十分な面があります。例えば産前・産後休暇や長時間労働の是正、労働安全衛生への取り組みを労働CSRの一環として発表する企業も少なくありませんが、それだけで社会に対して良い影響を与えられるかは疑問です。また、労働CSRについて目指すべき指針が定まっておらず、各企業が個々に取り組んでいるのが実情です。そのため、本当に効果が生じているかは不透明です。
人も企業も社会も幸せになるために
経営学における労働CSRの研究では、各企業が公表するCSR報告書やインタビュー調査などを通して、企業での人的資源管理の実態について明らかにします。経営学は、端的にいえば「企業をいかに儲けさせるか」を考える学問という側面をもっています。ただし、社会における企業の存在が大きくなり続けている現代にあって、ただ儲けるだけでは不十分で、どうやって儲けたかという過程についても考えないといけなくなってきました。経営をしっかりと成り立たせて企業を幸せにしながらも、そこで働く人や社会全体も幸せになるためにはどうすれば良いのかを考えることも、経営学の重要な役割なのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。