伝統芸能が生き延びるための仕組みを考える
伝統芸能は大人のたしなみだった?
あなたは伝統芸能の義太夫節を聞いたことがありますか。三味線を伴奏にして、物語を語って聞かせる音楽のことで、現在も歌舞伎や文楽(人形芝居)などの一部を成しています。大正時代は、この義太夫節が1曲でも語れないと、大人の間では商売の話もできないと言われるほど流行しました。義太夫節のほかにも日本舞踊や邦楽などを習い事として楽しむ人が多かったのです。つまりかつて伝統芸能は今より身近で、見る人と演じる人が一体になった魅力的なものでした。
体験すれば、面白く鑑賞できる
ところが現代では、見る人と演じる人が分断されています。そこで伝統芸能を体験してもらうワークショップなどが各地で開催されています。例えば、現代美術家とコラボレーションして子どもたちがオリジナルの面をつくり、その面をつけて舞台に立って、伝統芸能の能の動きを教わる取り組みなどがあります。その後にプロの舞台を鑑賞すると、「お面をつけると見えにくいのに、見えているみたい」「あんな動きができるなんてすごい!」と、より面白く、身近に感じられるようです。このような活動は、見る人と演じる人の両方を育てていくことにもつながっています。
伝統芸能が生き延びるために
また、新たな客層を取り込み、演じ手がモチベーションを維持できるように、文献から古い演目を発掘したり、新作をつくってレパートリーを増やしたりする活動も増えてきました。伝統芸能は、変化していないようで、実は少しずつ変化しているのです。地域で行われる民俗芸能でも、「地域以外の参加者を受け入れる」「年功序列をやめて、若い人の意見や希望が言いやすいフラットな組織づくりをする」「口伝えの技を文章や図にして可視化する」など、ルールを変えることで継承していこうとしています。寄付や助成金など、外部からの芸術支援も大切ですが、演じる人が経営学やアートマネジメントの視点を持って、生き延びられる仕組みを作っていくことも大切なのです。
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静岡文化芸術大学 文化政策学部 芸術文化学科 准教授 高島 知佐子 先生
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