ユネスコの無形文化遺産、日本が誇る「文楽」の魅力に迫る
江戸時代初期から伝わる伝統芸能
日本文化を代表する伝統的な芸能の一つに、「文楽(ぶんらく)」があります。江戸時代初期、三味線に合わせて物語を聞かせる浄瑠璃とあやつり人形の技が結びついて「人形浄瑠璃」が誕生しました。その後、いくつもの興行元が競い合いましたが、明治時代以降に唯一残った興行元が文楽座であったことから、現在は「文楽」という呼称が人形浄瑠璃の代名詞として使われています。2008年、文楽はユネスコの無形文化遺産に指定されました。
文楽は三位一体の総合芸術
文楽には、世界のほかの地域の伝統芸能には見られない、独特の魅力があります。時に力強く、時に繊細に、物語と登場人物の心情を義太夫節で描き出す「太夫(たゆう)の語り」、その語りに彩りを添え、一体となって物語を盛り上げていく「三味線の音色」、そして3人もの人形遣いによる息の合った熟練の技によって、手足のみならず顔の表情まで細やかに動かされる「人形」、この太夫、三味線、人形遣いの三業(さんぎょう)によって演じる三位一体の総合芸術であることが文楽の最大の特徴であり魅力です。
文楽の伝統を受け継いでいくために
文楽によって演じられる演目には、江戸時代以前の歴史的な題材を扱った「時代物」と、江戸時代の庶民の暮らしから題材を取った「世話物」などがあります。演目の構成単位は「段」と呼ばれ、1つの演目につき5~10段で構成されますが、古典だけで合計200段はあると言われています。そして現在も、新しい演目が創作され続けています。
こうした古来の伝統芸能を存続させていくには、太夫、三味線、人形遣い、それぞれの技芸員の技術を学び、受け継いでいく後継者の育成が不可欠です。現在、文楽を学ぶには、現役の演者への弟子入りや、国立劇場の養成所で研修を受けるといった方法があります。また、社会の中でもっと多くの人々に文楽の魅力を知ってもらう機会を増やすための取り組みと工夫も必要とされているのです。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 文学部 日本文化学科 教授 細田 明宏 先生
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