デザインで社会問題に挑む

デザインで社会問題に挑む

残薬が医療費を圧迫する

日本の国民医療費は年々増加しており、高齢者の割合がさらに高まり今後も医療費が増え続ければ、現在の医療保険制度が維持できなくなる可能性も指摘されています。そのため、少しでも医療費を抑える対策が求められています。その1つが残薬問題の解決です。病院から処方された薬の中で、飲み忘れや、指示通りに飲まないなどの理由から余らせてしまったものを「残薬」と呼びます。2022年度の厚生労働省の調査では、残薬の総額は年間500億円にも及びました。

デザインによる解決

残薬の問題に対処するための、デザインを活用した取り組みについての研究があります。残薬の原因の1つである「飲み忘れ」を防止するためには、決められた時間に飲む薬を簡単に把握できることが大切です。現在、複数の薬を一度に処方された場合、服用のタイミングが同じ薬を1回の服用分ずつにまとめて包装する「一包化」のサービスが薬局で行われています。1袋ずつパックされているために、薬の数や種類の間違いは防げますが、飲み忘れ自体を予防する効果はありません。そこで、朝昼晩の3回分のパックを日付や薬剤名などを記載した1つのシートにまとめるデザインが提案されました。服用する際には、その時間の1回分のパックを切り離すので、もし飲み忘れた場合でも、何日のどのタイミングで飲まなかったかが一目瞭然です。

社会課題を解決するデザイナー

グラフィックデザインでは、伝えるべき情報を、いかにわかりやすく、いかに魅力的に相手に届けるかを考えます。デザインの語源はラテン語の「designare」であり、これは英語のdoとsignが合わさったものです。signは、目印という具体的な形を表すとともに、誰かを導くという意味もあります。つまりデザインは、形にすることと、道筋を示すことの2つの役割を持っているのです。そしてデザイナーは、社会が抱えている課題に対して具体的な形を提示して解決策を示す職能だと言えます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

静岡文化芸術大学 デザイン学部 デザイン学科 准教授 小川 直茂 先生

静岡文化芸術大学 デザイン学部 デザイン学科 准教授 小川 直茂 先生

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デザイン学

先生が目指すSDGs

メッセージ

デザインは、社会と利用者をつなぐ接着剤の役割を果たします。デザイナーとして活動すると、食品や公共施設など、さまざまな仕事に携わることになります。またデザインとは、デザイナーの個性や表現を追求することではなく、デザインを依頼した相手の中にある課題や解を引き出す行為です。そのため、普段からいろいろなことに関心を持ち、何でも掘り下げてみる貪欲さ、経験するフットワークの軽さが求められます。デザインの道に進むなら、デザインだけでなく、それ以外のことにも好奇心を持ち、広く学んでいくことが重要です。

静岡文化芸術大学に関心を持ったあなたは

静岡文化芸術大学は、文化政策学部、デザイン学部からなる大学です。「文化」と「デザイン」の融合が新しい価値の創造を可能にするという理念のもと、時代の要請に応えられる創造性と実践力を持った人材を育成します。社会に貢献できる人材の育成を目標に各領域を段階的に学び、多方面から物事にアプローチできる力を養う教育を目指しています。
キャンパスは静岡県浜松市の中心市街地に位置します。多彩な産業を擁する地域特性を活かし、企業や公共機関での実習を積極的に取り入れ、学内だけでは得られない貴重な経験を生み出します。