ミュージアムが普及した今、求められるのは?
ミュージアムの代替機能を果してきたもの
2022年現在、日本にはミュージアム(博物館・美術館等)が約5700館あり、そのうち約70%が公立です。今では身近なミュージアムですが、その数が増えたのは戦後の高度経済成長期以降で、それまでは決して多くはありませんでした。それまで公立ミュージアムの代替機能を果たしてきたのは、百貨店(デパート)を中心とする民間企業です。現在でもデパートのギャラリーでは美術展覧会が開催されていますが、公立ミュージアムが少なかった時代に、日本の文化や芸術の発展に寄与してきたのは、デパートを中心とする民間企業だったのです。
持続的発展が今後の課題
公立のミュージアムは営利目的の施設ではないため、ほとんどが公費でまかなわれている状況です。しかし、近年は財政難による予算の減少傾向が続いているため、厳しい運営となっています。ミュージアムに収蔵されている文化財は、先人が守り伝えてきた宝物であり、未来につなぐバトンとして、保護、保存、継承すべきものです。しかし、維持管理の費用負担が大きいため、デジタル化を活用するなど、これからの時代にふさわしい保存と活用のあり方が、現在模索されています。
学芸員に求められる役割
博物館や美術館に勤務し、作品の展示・保管・調査研究・教育普及の仕事をしているのが「学芸員」です。学芸員といえば、展示の案内をしているイメージがあるかもしれませんが、自治体への予算要求、民間企業へ出資のお願い、美術品の収集や展示企画など、業務は多岐にわたります。厳しい運営を強いられているミュージアムが存続していくためには、多くの人に文化財に触れ、重要性を認識してもらう機会を拡大すること、地域に根ざした運営などが求められています。
今でこそ当たり前に存在するミュージアムですが、もしその存在がなくなってしまったときの文化的影響は計りしれません。文化財とそれに接する機会をどのように守っていくのかは、真剣に考えていくべき課題といえるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
静岡文化芸術大学 文化政策学部 芸術文化学科 准教授 田中 裕二 先生
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