ライフコースから考える 教育・福祉政策
ライフイベントの起こり方を明らかに
ライフコース研究とは、進学、就職、結婚、出産、離家(りけ)など人生で起きる様々なライフイベントの起こり方や選択のパターンについて、その特徴を明らかにするという研究分野です。「コホート」というカテゴリーで括った同年生まれの集団や、同年の卒業生集団などを追跡的に調査した「パネルデータ」を分析することが主な手法です。
日本で同年に博士課程を修了した全員を対象にした追跡調査では、約半数に就業経験があって、博士課程はリカレント教育、またリスキリングの場になっていることが明らかになりました。また、ある分野では非正規雇用が多いために収入が不安定な期間が長く、結婚や出産に影響することまでも明らかになっています。
制度の変化をコホートで捉える
2000年代以降、急速に整備された障害福祉制度や特別支援教育ですが、制度変更のタイミングによって、世代間に大きな経験の差があり、社会参加や自立に関する考えも世代によって大きく異なります。これまで一般女性のパネルデータ分析から始まり、博士人材、富裕層と言った様々な集団の追跡調査から多くの知見が得られましたが、障害福祉の分野での急激な変化は研究課題としても興味深いものです。これまでの知見を障害福祉の分野で生かすことで、SDGs「誰もが取り残されない、インクルーシブ社会の実現」へも貢献できるでしょう。
エビデンスに基づく政策提言を
ライフコース研究の魅力のひとつは、分析した結果を政策提言につなげられる点にあります。EBPMと言って確かなエビデンス(証拠)に裏付けされた政策の立案、検証が求められているのです。データの公開が進み、一般の人でも使えるデータが充実してきました。これを使わない手はありません。データの存在を知り、基本的な分析方法を学ぶことで、社会を評価・デザインするという社会科学の新たな世界が広がって行きます。
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