本と人、人と人が出会う場所――公共図書館の役割を考える
本は希望の光、生きる上で欠かせないもの
「シャンティ国際ボランティア会」というNGO(非政府組織)が、海外の難民キャンプで図書館サービスを行っています。衣食住の提供も大切ですが、本を通じて難民キャンプ以外の広い世界を知ったり、自分にも大きな可能性があることを学んだりして、将来への希望を持てるようになることが、特に子どもたちにとって生きる上で非常に大切だからです。人々が知識、思想、文化、情報に自由に接することができてこそ、幸せな社会が実現するのです。
すべての人が平等に図書や資料を利用可能に
公共図書館の役割はユネスコ公共図書館宣言にもあるように、すべての人が書籍をはじめとする情報を自由に利用できるようにすることです。移動図書館もそうした取り組みの一つです。
昨今では書籍や視聴覚資料の出版点数が激増しており、一つの図書館で収集するのは不可能です。そこで、国立国会図書館、県、市町村、大学などさまざまな図書館が連携を強化して、市民が必要な資料をスムーズに取り寄せられるシステムを作っています。外国の大学図書館の資料をコピーで取り寄せられるケースもあります。
まちづくりの拠点――広がる公共図書館の役割
また、地域の人同士のつながりが希薄になった現在、まちづくりの拠点としての役割も、公共図書館には期待されています。最近では、公共図書館が保健所などと連携して、赤ちゃんが本に触れる第一歩として、また、母親に対する子育て支援として、親子で絵本に触れる機会を提供する「ブックスタート」という取り組みが始められています。
さらには、中学生、高校生にとっても勉強のためだけでなく、自分の学校以外に同じ興味を持つ友だちを見つけたり、親や教師以外の大人と知り合って職業について考えるなど、徐々に自立していく場としての可能性も、公共図書館にはあります。各地の公共図書館が、いろいろなイベントを企画しながら、情報センターとしてだけでなく、地域の交流を促す存在となるべく模索を続けているのです。
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先生情報 / 大学情報
静岡文化芸術大学 文化政策学部 文化政策学科 教授 林 左和子 先生
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