モノのデザインの心理学

モノのデザインの心理学

イノベーションは、技術革新だけじゃない

イノベーションとは、新しいモノ・コトを導入することにより、社会に新しい価値をもたらす革新のことです。
現代は技術が進んで豊かになり、さまざまな商品やサービスが人々の生活を大きく変えました。実際に世の中に普及するモノと、そうでないモノがあるのは、なぜでしょうか。ここで鍵となるのは、商品やサービスが、それを受容する人の特性を十分に考慮してつくられているかということです。

心理学的な視点から見たモノのデザイン

夏はどうして暑いのでしょうか、スマートフォンではなぜ情報のやり取りができるのでしょうか。私たちは、このような疑問に答えることができます。そして、初めてスマートフォンを手に入れたときに、おおよそどのように使うのかがわかるのは、スマートフォンの仕組みを、正確でなくとも、大ざっぱに想像しているからです。このように心のなかにあるモノの仕組みに関する知識のことをメンタルモデルと呼びます。人はメンタルモデルをもつことで、見たことのないモノでも、どのようなモノであるかをある程度想定して、使うことができるのです。
また、ある商品の種類は多い方がいいでしょうか、少ない方がいいでしょうか。人は、たくさんの商品の中から選ぶことを好みます。しかしあまりにも多い選択肢は、人の購買意欲を結果的に阻害してしまうことが知られています。なぜなら人間のもつ記憶システムは、一度に多くの情報を処理するのが苦手なためです。このように、私たちの身の回りの商品やサービスが、人に受け入れられるかどうかには、人間の認知の仕組みが関わっています。

人間中心のものづくりのために

昔は使う側の人間のことをあまり考えずにものづくりが行われていました。しかし、今では道具を使う人間のことを中心に考えるものづくりに変わってきています。そのような人間中心の設計をするためには、現実の場面で、商品やサービスを利用している人の行動を観察することが効果的です。

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先生情報 / 大学情報

成城大学 社会イノベーション学部 心理社会学科 教授 新垣 紀子 先生

成城大学社会イノベーション学部 心理社会学科 教授新垣 紀子 先生

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認知科学、認知心理学

メッセージ

常日頃から人の行動や、身の回りのものを観察してみると面白いものです。アプリが使いにくいと思ったとき、道具を間違って操作をしてしまったとき、目的地とは違った方向に進んでしまったとき、なぜそのようになったのか、少し立ち止まって考えてみてください。このような行動の背景には、外界と、人が外界を認知し、判断するという心の働きのメカニズムが関わっています。いろいろな疑問を持って観察すると、普段見ているものも違ったふうに見えてきます。それが「認知科学」を学ぶ一歩になります。その一歩を踏み出してみてください。

先生への質問

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成城大学は小田急線「成城学園前」から徒歩4分、世田谷の住宅街にあります。キャンパスは自然が豊かで、全学部の学生が4年間学びます。学生数約5700名に対し、教員数は約570名。少人数の授業が多く、学生一人ひとりの個性を伸ばすことを重視しており、アットホームな雰囲気です。本学が学園創立以来大切にしてきた「個性尊重」の理念は100年以上受け継がれ、その中核である全学生必修のゼミナールでは、教員や学生同士が積極的に対話することで、学生一人ひとりが多様化する世界で活躍できる知性と感性を磨きます。