医療は赤ちゃんの意思も受け止められるのか

医療は赤ちゃんの意思も受け止められるのか

患者の「声」が聞けない場合

私たちは病気になったら病院に行き、医師の診断を受け、その後の治療について話し合います。しかし、言葉でコミュニケーションがとれない赤ちゃんの場合、特に新生児集中治療室(NICU)に入るほど重い病気を患っているケースでは、医療従事者と親が治療方針を決めていくのですが、容易なことではありません。どうしたら、医療従事者と親が赤ちゃんの意思を代理判断できるでしょうか。赤ちゃんの声なき声に耳を傾け、赤ちゃんのこころに向き合うことが大切です。ここに高齢者や障害者と同様「配慮が必要な患者」である、赤ちゃんの治療の難しさがあります。

子どもを相手としたチーム医療に必要なもの

医療の世界では医療従事者が協力し合うチーム医療が進んでいますが、その中で薬剤師が果たす役割も重要です。
赤ちゃん、あるいはもう少し成長した小児に投薬をする際は、小児医薬品の特徴だけでなく、患者となる子どもの特徴も知っておく必要があります。そのためにチームの連携は必須ですし、薬剤師はより飲みやすい薬の提供、薬を嫌がられない工夫を行う必要があります。そのうえで医療従事者、保護者と信頼関係を築き、赤ちゃんや小児の代理意思決定を行い、治療方針に関する合意性をとるといった活動を実践していくのです。こういった状況の構築につながるものとして、現在も医療従事者や保護者へのアンケート、インタビュー調査をベースとした研究活動が行われています。

意思表明ができない患者は人だけではない

赤ちゃんを含め、自分の意思をしっかり示せない子どもの意見も何らかの形で治療に反映させられないか、その方法については今も探究が続いています。このように患者にとっての最善を常に考えること、それが生命・医療倫理学の一つの側面だと言えるでしょう。
また、言葉が通じない患者の相手をするという意味ではペットも同じです。赤ちゃん、小児に対する治療はペット医療にも通じるものとして、今後の発展に大きな期待がかけられています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京薬科大学 薬学部 医療薬物薬学科 教授 櫻井 浩子 先生

東京薬科大学 薬学部 医療薬物薬学科 教授 櫻井 浩子 先生

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生命・医療倫理学

メッセージ

医療の現場にロボットやAIが導入される動きが加速する中、薬剤師はそれらとの共存について考えていかなければなりません。薬剤師をめざすなら、「人間」の薬剤師ならではの職能とはどんなものか、若い世代の豊かな発想力で導き出していってほしいです。同時に、「薬を渡してくれる人」とのイメージから抜けきれていない薬剤師の存在価値も示していってください。そのためには現状の把握も必要ですから、ドラッグストアなどでアルバイトをしたり、患者や患者家族として薬剤師と接したりしてみましょう。

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東京薬科大学は私立で最初の薬学部と、日本で初めての生命科学部を併せ持つ大学です。
緑に映える赤レンガのキャンパスでは、両学部とも多彩な実験や研究活動を通じて、学生が自ら考える力を伸ばすこと、医療分野、生命科学・環境分野でヒューマニズムあふれるスペシャリストの育成を目指しています。