いい企業を見分けるには財務報告書をチェックしよう！

黒字企業が倒産？

企業の経営状況を判断する場合、利益（黒字）が出ているかを見るだけでは不十分です。ある不動産会社の例では、純利益は数年連続で黒字でしたが、倒産し上場廃止となりました。その原因は現金の収入と支出とのタイミングのずれにあります。企業は商品を仕入れ、商品を販売し、顧客から代金を受取り、収入を帳簿に記録して利益を計算しますが、収入には現金をその場で受取る現金売りと、代金を後に回収する掛売りがあります。現金売りと違って、掛売りの場合は現金が入るまでにタイムラグがあります。その間もスタッフの給料などの現金支出が生じます。このような現金の出入りするタイミングのずれによって資金が不足し、これが原因で利益が出ていても倒産することもあるのです。

キャッシュフロー計算書の見方

企業の活動は商品を販売する営業活動、設備投資をする投資活動と銀行や株式市場から資金を調達する財務活動の3種類に分類されます。これらの企業活動から生じる現金の動きを記したのが「キャッシュフロー計算書」です。上記の企業のキャッシュフロー計算書を見ると、営業活動によるキャッシュフローは4年連続赤字です。その穴埋めのため、社債や株式を発行し、財務活動を行うことで現金を捻出しました。一方、花王のキャッシュフロー計算書では営業活動がプラス、投資活動と財務活動がマイナスです。これは本業で利益をあげ、将来のための投資をし、堅実に借金を返していることが読み取れます。またソフトバンクのキャッシュフロー計算書では、2006年度にvodafoneを買収するため、1兆円以上を金融機関から借入れましたが、翌年以降営業活動によるキャッシュフローが増加したため、経営的には勝負に出て成功したと言えます。

会社の健康診断書

キャッシュフロー計算書などの財務報告書は健康診断書に例えられます。医師が健康診断書を見て患者にアドバイスするように、会計専門家は財務報告書から企業の経営上の問題点を読み取って、それを改善するための処方箋を提案するのが仕事です。

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横浜市立大学国際商学部国際商学科教授張櫻馨先生

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会計学

メッセージ

会計学は生活に密着した学問なので、遊ぶことや買い物も勉強の一つになります。例えばコンビニエンスストアで買い物をするときにスタッフがどうレジを打っているか、どうやって商品を並べているかを観察しておくと、大学で専門の理論を学んだときに全部がつながってきます。会計学を学びたいからといって、いきなり難しい専門書を読んでもわからない言葉だらけで腰が引けてしまうでしょう。それよりも自分の興味があることを資料で調べたり、注意深く観察したりする方がずっと役に立つと思います。

先生への質問

先輩たちはどんな仕事に携わっているの？

横浜市立大学に関心を持ったあなたは

横浜市立大学は、「実践的な教養教育」を導入しています。高度な専門知識を教養教育を通じて身につけ、バランスのとれた人材育成を図る教育システムです。日本を代表する国際港湾都市に位置する大学として、世界に羽ばたく人材の輩出を目的に、国際感覚を養うさまざまな取り組みも充実しています。個々の可能性を最大限引き出すための厳しい教育プログラムを愛情を持って進めていきます。