講義No.15449 看護学

小児がん患者への告知・病気説明 子どもの心に添った医療

小児がん患者への告知・病気説明 子どもの心に添った医療

日本独特の課題

がん告知が日本でも当たり前になってきている現在、小児がんの告知については標準的な方法が未だ確立されておらず、病院や地域によって対応が大きく異なっています。欧米では6歳以上の子どもへの病気説明を法律で義務付けている国もありますが、日本では「知らせたくない」という親の意向が重視される傾向があります。告知をためらう理由として、「子どもがショックを受けるのではないか」「まだ理解できないのではないか」という心配があります。しかし研究によると、子どもたちは大人が何かを隠していることを敏感に察知し、むしろ説明がないことで不安を感じることの方が多いのです。日本特有の「親が子どもを守る」という文化を理解しながら、子どもの自立を促進する告知方法が模索されています。

子どもの目線で伝える

長年の研究と実践の積み重ねから、子どもでも、説明の仕方を工夫すれば治療の必要性を理解できることがわかってきています。例えば、3、4歳くらいの子どもに「体の中にバイキンマンがいて、アンパンマンの薬でやっつける。そのときに髪の毛が抜けることもあるけれど、また生えてくるよ」という説明をすると、子どもたちは「じゃあ頑張る」と前向きな気持ちになるのです。子どもたちが求めているのは、難しい病名そのものではなく、「自分の体に何が起きているのか」「どうして治療が必要なのか」という情報なのです。

知らされなかった子どもたちへ

入院中に小児がんだと説明を受けないまま治療を続けた子どもたちも多く存在します。そうした子どもたちが成長して、一人で外来に通うようになったときに、新たな問題が生じます。症状に過去の小児がんからの影響が疑われる場合に、医師はそれを伝えてよいかがわからず、コミュニケーションが困難になり、将来的な健康管理にも支障をきたします。現在、こうした状況に対応するために、外来での段階的な説明方法や親への支援についての研究が進められており、子どもたちがより良い医療を受けられる環境づくりが目標とされています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

秀明大学 看護学部  教授 古谷 佳由理 先生

秀明大学看護学部 教授古谷 佳由理 先生

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小児看護学、家族看護学

先生が目指すSDGs

メッセージ

看護は人との関わりを通して、自分自身が常に成長できる職種です。人生は一度きりですが、患者さんやご家族と一緒に歩んでいくことで自分の世界がより豊かに広がっていきます。私は子育ての経験がない時期に小児科で働きましたが、お子さんや親御さんとの関わりを通して「親ってこんな思いなんだな」と深く理解することができました。自分と向き合うことも多く、ときには辛い場面に遭遇することもあり、人の命を預かる責任はとても重いものです。だからこそたくさん勉強する必要がありますが、一生続けられる素晴らしい仕事だと思います。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

秀明大学に関心を持ったあなたは

秀明大学の看護学部は、大学地元、八千代市の強い要請を受けて設立されました。千葉県内から約50%、関東圏外から約30%の学生が入学し、看護職として地域に貢献するという熱い思いをもって学修に励んでいます。校訓「知・技・心」を常に意識して講義・演習・実習に取り組み、少人数の学修での意見交換から学びを深め、拡大しています。充実した学内設備と近隣の実習施設を有し、看護師、保健師の国家試験受験資格を得ることができ、国家試験対策、就職支援、担任制による丁寧なサポートが学生の高い満足度を得ています。