小児がん患者への告知・病気説明 子どもの心に添った医療

日本独特の課題
がん告知が日本でも当たり前になってきている現在、小児がんの告知については標準的な方法が未だ確立されておらず、病院や地域によって対応が大きく異なっています。欧米では6歳以上の子どもへの病気説明を法律で義務付けている国もありますが、日本では「知らせたくない」という親の意向が重視される傾向があります。告知をためらう理由として、「子どもがショックを受けるのではないか」「まだ理解できないのではないか」という心配があります。しかし研究によると、子どもたちは大人が何かを隠していることを敏感に察知し、むしろ説明がないことで不安を感じることの方が多いのです。日本特有の「親が子どもを守る」という文化を理解しながら、子どもの自立を促進する告知方法が模索されています。
子どもの目線で伝える
長年の研究と実践の積み重ねから、子どもでも、説明の仕方を工夫すれば治療の必要性を理解できることがわかってきています。例えば、3、4歳くらいの子どもに「体の中にバイキンマンがいて、アンパンマンの薬でやっつける。そのときに髪の毛が抜けることもあるけれど、また生えてくるよ」という説明をすると、子どもたちは「じゃあ頑張る」と前向きな気持ちになるのです。子どもたちが求めているのは、難しい病名そのものではなく、「自分の体に何が起きているのか」「どうして治療が必要なのか」という情報なのです。
知らされなかった子どもたちへ
入院中に小児がんだと説明を受けないまま治療を続けた子どもたちも多く存在します。そうした子どもたちが成長して、一人で外来に通うようになったときに、新たな問題が生じます。症状に過去の小児がんからの影響が疑われる場合に、医師はそれを伝えてよいかがわからず、コミュニケーションが困難になり、将来的な健康管理にも支障をきたします。現在、こうした状況に対応するために、外来での段階的な説明方法や親への支援についての研究が進められており、子どもたちがより良い医療を受けられる環境づくりが目標とされています。
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秀明大学看護学部 教授古谷 佳由理 先生
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