不安や悩みはあっていい! 日本生まれの心理療法とは?
不安や恐れと、どうつきあうか?
「人前でうまく話せない」「何度も手を洗わないと落ち着かない」「病気ではないかと心配」などの症状に悩む人がいます。人は誰でも不安や恐れを持っていますが、不安や恐れが強くて生活に影響が出る場合は心理療法を行います。欧米の心理療法では、不安や恐れをなくすか、コントロールしようとするのが一般的です。一方、「不安や恐れを排除するのではなく、抱えたままでいい」と考える日本生まれの心理療法があります。それが1911年に発表された「森田療法」です。森田療法には、「あるがままを受け入れる」という東洋的な自然観や人間観が生かされています。
訓練ではなく、生活の必要性から取り組む
例えば、ドアノブに触れない不潔恐怖の人の場合、認知行動療法では、まずドアノブを触る練習をして、それができたら次はトイレの便器を触るというように、段階的に訓練をします。一方、森田療法では、それらに訓練として取り組むのではなく、生活の必要性の中で行う作業だと考えます。例えばペットのウサギ小屋を掃除するのは治療のためではなく、小屋が汚いとウサギがかわいそうだからというモチベーションや姿勢を大切にするのです。このようなアプローチで症状の改善をめざします。
悩みの深さは、生きる欲求の強さ
不安や恐れは、実は「他人に好かれたい」「自分の力を認めてほしい」「健康・清潔でいたい」などの生きる欲求の裏返しです。悩みが深い人は生きるエネルギーが強いとも言えます。不安はあって当然のものです。不安をそのままに、目の前のことに、「~したい」と思うモチベーションに乗って、手を出していくことが大切です。同時に、「~しなきゃ」という思いを削って、感情体験をふくらませる支援を進めていきます。そうすると、その人らしさが発揮されていきます。
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