スリランカの認知症高齢者はなぜ地域で暮らすことができるのか?

スリランカの認知症高齢者はなぜ地域で暮らすことができるのか?

スリランカの高齢者事情

2004年のスマトラ島沖地震で、スリランカは津波で大きな被害を受けました。津波によって心的被害を受けたことが、将来的に認知症の発症に影響を及ぼすのではないかということで、2006年からスリランカで調査が行われました。
調査でわかったことは、「被災した高齢者が心的外傷を負っていること」「調査した時点で日本と同じくらいの割合で認知症の疑いのある人がいる」ということでした。しかし、この結果は統計学的な数値です。数字で表された集団の「傾向」と、実際の住民の「暮らし」は大きくかけ離れています。それは、この調査中に、現地で認知症と思われる人とほとんど出会わなかったからです。

日本と異なる生活のあり方

では、スリランカの認知症高齢者は、地域でどのように暮らしているのでしょうか? 認知症の人を見かけないというだけで、「いない」と断言することはできません。スリランカは信仰心があつく、高齢者を敬ったり、みんなでケアすることが当たり前だと考えます。老人ホームのような施設はありますが、入所するのはごく一部の人で、地域の中で高齢者が孤立せず、暮らしていける何らかの仕組みがあるのかもしれません。こうした暮らしが認知症の発生を抑えたり、あるいは認知症になったとしても不安なく生活していけることにつながっているとも考えられます。

文化と医療の違いを探る「医療人類学」

こうした環境と病気の関連性については、今後の詳しい研究を待つ必要がありますが、そこで得た知見が、将来的に日本の医療や看護を見直すきっかけになりえます。ただ、スリランカのやり方をそのまま日本に当てはめることはできません。スリランカと日本では、生活様式も家族形態も違っているからです。
しかし、その差異を踏まえたうえで、日本の高齢者医療に役立つことがあるはずです。そのためには、スリランカと日本の文化の違い、そして医療に関する考え方の違いをきちんと把握することが必要になります。そういったことを探究していくのが、「医療人類学」という学問です。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 健康福祉学部 看護学科 准教授 野村 亜由美 先生

東京都立大学 健康福祉学部 看護学科 准教授 野村 亜由美 先生

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文化人類学、医療人類学

メッセージ

高校生から「どんな勉強をしたらいいですか」と聞かれることがあります。私は2つの力を養うことをお勧めしています。1つめは「問いを立てる力」です。問いを立てるとは、時代に流されずあたり前を疑うということです。そしてもう1つは「生き抜く力」です。自分が困ったとき、誰に聞けばわかるのか?という社会性を身につけることです。時間がかかってもよいので、自分が「なんだろう?」と思ったことについては、とことん追求、探究してください。これは大学生として学ぶ姿勢であり、看護の基本である「人間理解」にもつながります。

先生への質問

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