漂着する「木材」と「マイクロプラスチック」

漂着する「木材」と「マイクロプラスチック」

間伐材が海に流れ出る

伊勢湾は愛知県と三重県に囲まれた海です。東側は渥美半島、西側は志摩半島がつき出しているため、外洋との水の交換が少ない半閉鎖性海域となっています。そのため、漂流物が湾内の沿岸に漂着しやすいという特徴があります。湾の奥には木曽三川と呼ばれる木曽川・揖斐(いび)川・長良(ながら)川が注ぎ込んでいます。その上流には長野県や岐阜県の林業が盛んな山間部があります。人工林では木を間引く「間伐」を行います。間伐で出た木材がそのまま放置されると、豪雨により川に流出し、それが伊勢湾に流れ出てしまうのです。

海の流れをシミュレーション

流れ出た木材は湾内を漂います。流木は大きく重量があるため、養殖や漁業に直接被害を与えるほか、航行する船の邪魔になったりスクリューを壊したりします。流木を撤去するには多額の費用がかかるため、根本的な改善策を講じるためには、どの河川から出たものなのかを突き止めなければなりません。そこで、豪雨の日の湾内の水の流れをコンピュータでシミュレーションします。どの流域で雨がどれくらい降ったのかを分析し、季節風などの条件を加味しながら、事例ごとにシミュレーションすることで、流出元を推定することができるのです。

マイクロプラスチック問題

近年では、海洋のマイクロプラスチックも問題となっています。伊勢湾で起きる直接的な被害としては、養殖の海苔の中に紛れ込んで品質を低下させる事例が報告されています。また、プラスチックは海洋を漂っている間に海水の汚染物質を吸着し、それを動物プランクトンなどの小動物が体内に取り込むことで、食物連鎖を通じて生態系全体に影響を及ぼします。マイクロプラスチックにもいろいろな種類があり、発生源が異なります。農業系、漁業系、工業系、生活系のマイクロプラスチックがあります。発生者に対策をしてもらうには、汚染の情報を知らせる必要があり、調査データは、新聞、テレビ、インターネットなどで積極的に発信されています。

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四日市大学 環境情報学部 環境情報学科 教授 千葉 賢 先生

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メッセージ

高校での勉強がどのように役立つのかわからず、面白くないと思うことがあるかもしれません。でも、それを積み上げることで、実社会に出てから出会うさまざまな問題を解く力が身につきます。基礎は非常に大切です。焦らずコツコツと勉強してください。
また、若いときから視野を広げるのは大切です。人間社会や自然の事柄に対して好奇心を持ち、アンテナを張って、積極的に知識を吸収してください。社会で行われる活動に参加して、いろいろな体験を積むのも、視野を広げるに大いに役立つでしょう。

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四日市大学は、四日市市と学校法人暁学園の公私協力型大学として1988年4月に開学し、現在では、総合政策学部(地域・まちづくり分野、国際・経営分野、スポーツ・人間分野)と環境情報学部(自然環境分野、メディア情報分野)を設置しています。建学の精神「人間たれ」を教育の礎に、フィールドワークを全学部で重視し「Act4U」をスローガンに、大学全体で地域への貢献をめざし、産業振興、環境保全に取り組み、地域社会の課題解決を導き実践的な応用力を身に付け、地域に望まれる人材育成を行っています。