ご当地グルメが住民意識を変える

ご当地グルメが住民意識を変える

地域社会を持続可能にするには

三重県北部に位置する四日市(よっかいち)市は主要駅の周囲には百貨店や映画館が立ち並ぶ一方で、郊外には自然が豊かに残り、新鮮な農作物が手に入る暮らしやすい地域です。しかし、昭和40年前後に起きた公害病である四日市ぜんそくのイメージが強く、現在の地域の魅力が正しく伝わっていません。これからは地域間競争の時代と言われ、魅力が認識された地域は外部からの転居が増えて活性化しますが、反対に住民が流出すれば将来的な地域社会の持続は難しくなります。まずは住民自身が住んでいる地域に誇りを持てるかどうかが課題です。

隠れた地域資源の活用

地域の魅力づくりには、土地にもともと根付いていた地域資源の活用を探ります。わざわざ新しいものを作り出しても、地域の魅力として定着することは困難です。地域資源には自然環境や伝統芸能、歴史的な遺産のほか、ご当地グルメのような郷土料理や方言なども含まれます。これらは住民からすると当たり前過ぎて、魅力に気がつかないこともあります。そのため、地域活性化活動には、多様性のある人材が必要となります。当たり前と思っていた文化が、地域外の人からすると珍しかったり、面白かったりすることがあるからです。そうやって見出された地域資源を磨き上げ、地域の宝として外に発信していく活動が地域の魅力づくりにつながります。

ご当地グルメ「四日市とんてき」で地域活性化

「四日市とんてき」は、分厚い豚肉をにんにくと一緒に濃い目のたれでソテーして、キャベツの千切りを添えた料理です。四日市市では戦後間もない頃からお店で出されていたほど、住民には馴染み深いものでした。これを「ご当地グルメ」として地域活性化につなげる活動が行われてきました。今では自治体のアンケート調査で、四日市市の魅力として「とんてき」が上位に入るようになり、地域の人が誇れるものとして定着してきています。地域資源を発掘し、再評価と再構築をすることが、地域活性化の鍵となる好事例です。

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先生情報 / 大学情報

四日市大学 総合政策学部 総合政策学科 教授 小林 慶太郎 先生

四日市大学 総合政策学部 総合政策学科 教授 小林 慶太郎 先生

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政策科学、行政学、地方自治論

先生が目指すSDGs

メッセージ

より良い未来の暮らしを描くためには、自分たちの身近な問題から解決していくことが必要です。例えば、ごみの分別はどうやって決められたのかを知っていますか? もし分別の方法を変えたいと思った時に、自分たちの声をどう伝えて、どう反映させていけば良いのでしょうか?
多くの人たちと意見を交換しながら、身近な地域の問題をどう解決していけばいいかという結論を導き出していくのが地方自治です。身近なところから考えて理解していくと、政治全体がわかるようになります。まずは、一緒に地方自治について勉強していきましょう。

先生への質問

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四日市大学に関心を持ったあなたは

四日市大学は、四日市市と学校法人暁学園の公私協力型大学として1988年4月に開学し、現在では、総合政策学部(地域・まちづくり分野、国際・経営分野、スポーツ・人間分野)と環境情報学部(自然環境分野、メディア情報分野)を設置しています。建学の精神「人間たれ」を教育の礎に、フィールドワークを全学部で重視し「Act4U」をスローガンに、大学全体で地域への貢献をめざし、産業振興、環境保全に取り組み、地域社会の課題解決を導き実践的な応用力を身に付け、地域に望まれる人材育成を行っています。