現実の世界では、「1+1=2」になるとは限らない?
算数で習う「1+1=2」
小学校で習う算数では、「1+1=2」になると教わります。こうした考え方で、重さや長さ、確率など、1つの集合に1つの数値を対応させることを「加法的集合関数」と呼びます。「1+1=2」になるのは当たり前」と受け止める人がほとんどかもしれませんが、現実の世界には、1+1が必ずしも2にはならない現象が、実はたくさん存在します。
1+1が2にならない現象
例えば、古本屋さんでは、ある小説の上巻だけ、あるいは下巻だけの値段より、上下巻2冊セットの方がプレミアム価格として高い値段に設定されている場合があります。逆に、オンライン書店であるマンガを買おうとする時、1巻ずつバラ売りされている場合の値段より、全巻セットをまとめ買いで購入する場合の方が、値段が少し安くなっている場合もあります。このような値付けの例は、「1+1=2」という考え方では数学的にうまく説明できません。
プレミアム価格やまとめ買いのような値段を数学的に説明する場合には、加法的集合関数ではなく、「非加法的集合関数」と呼ばれる理論を用いる必要があります。これらの現象には人間の持つあいまいな性質が密接に関わってくるので、行動経済学など、ほかの研究分野の理論も含めて、横断的に考えていく必要があります。
人間の複雑さを許容して考えていく
人間の複雑な行動を分析して、その数学的な性質を解明していくことには、分析ツールにコンピュータやAI(人工知能)を駆使したとしても、難しい面が数多くあります。おそらく、人間が自分たち自身の行動を完全に理解できるようになることはないでしょう。その複雑さを、ある程度は許容して受け入れていく部分が必要なのかもしれません。「1+1はなぜ2になるのだろう」「1+1が2にならない数学も、もしかしたら作れるかもしれない」、私たちの周囲を取り巻く世界を理論的に説明しようとするとき、そんな視点も求められるのです。
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玉川大学 工学部 数学教員養成プログラム 教授 成川 康男 先生
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