建築への応用が期待される「剛体折り紙」とは?

建築への応用が期待される「剛体折り紙」とは?

「動く折り紙」を作る

折り紙は工学の方面で多様に応用されています。その発展の一つに、「折り紙で動くものを作る」という課題への対応があります。そのとき重要になるのが「剛体折り紙」という概念です。
「剛体折り紙」とは、紙ではなく、硬いパネルとパネルとの間をちょうつがいのようなものでつないだものだと考えてください。パネルそのものは変形しないので、動きは限られます。また、剛体折り紙で作れるメカニズムを「剛体折り紙メカニズム」と言います。

剛体折り紙の二つの構造

剛体折り紙は数学的観点からも研究されていますが、最大の利点は、厚みのある材料を使えるので、大きい空間や大きいメカニズムに折り紙を転用できるという点です。厚みがあるというところは紙と大きく違う点ですが、折り線にあたるところでは線として考え、なおかつ、つながれた部材が動く方法で作ります。
剛体折り紙は、ベースにする図形によって三角形パネル構造と、四角形パネル構造の2種類に分かれ、それぞれに特徴があります。三角形パネル構造は非常にフレキシブルで、いろいろな形に変形できます。これは建築に応用した場合、用途に合わせて変形が求められる場合に利用できます。

四角形パネル構造の特徴

これに対して四角形パネル構造は、とても頑健で、動きは一定です。また、どこか1か所を固定すると構造全体が固定され、安定することが大きな特徴です。これも建築への応用が考えられます。四角形パネル構造では折りたためるけれど強度のあるトンネル状の空間などが作ることができます。
また、曲線折りとの融合でさらに新しい形が作れたり、筒型構造にすることで、ある方向からは折りたためるけれども別の方向からの力には非常に強いという構造が作れたりします。
剛体折り紙は、持ち運びが簡便で頑丈ということで、被災地での仮設建築物などに、その応用が考えられています。

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先生情報 / 大学情報

東京大学 教養学部 学際科学科 准教授 舘 知宏 先生

東京大学 教養学部 学際科学科 准教授 舘 知宏 先生

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建築学、構造工学

メッセージ

私は折り紙を研究していますが、これまでにない新しい形を創作するという行為が、数理を用いてできるということに面白さを感じています。研究の基本姿勢は自ら調べ自ら考えることですが、研究者をめざす人でなくても、このことはすべてに通じることなので、この「自ら調べ自ら考える」ということを大事にしてください。もちろん、そのためには基礎の勉強が非常に大切です。勉強が何の役に立つのかという疑問を持つこともあるかもしれませんが、何に役に立てられるのかを自ら考えて、新しい価値を作りだすことをめざしてほしいです。

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東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。