直線から平面に、数の概念を大きく広げる「複素数」とは?
方程式を解くにはどんな数の概念が必要か?
「ax=b」の形で表される一次方程式は中学校で習う数学の基本です。例えば、「2x=3」という方程式は分数、もしくは小数を知らないと解けません。この場合のxの値は1と1/2、つまり1.5です。では、「2x+1=0」はどうでしょうか。xの値は-0.5になります。小数と負の数を知らないと解けません。つまり、一次方程式を解くためには正負の数、分数・小数が必要となるのです。
では二次方程式はどうでしょうか。「xの2乗=1」なら解は1、もしくは-1です。「xの2乗=2」の解は「1.414……」で表されるルート2です。ここで無理数が必要となります。無理数とは分子、分母がともに整数である分数では表せない数のことです。
虚数があれば二次方程式はすべて解ける
次に、「x²+1=0」はどうでしょうか。「x²=-1」となり虚数単位の「i」を知らなければこの方程式は解けません。虚数とは数直線上には存在しない数のことで、実数と対(つい)になる数です。このように、二次方程式を解くためには数の概念を複素数まで拡張していく必要があるのです。
さらに二次方程式よりも複雑になる三次方程式を解くためにはどのくらいの拡張が必要になるのでしょうか。19世紀前半に活躍したドイツのガウスという数学者が「高次方程式を解くためには、複素数まであれば十分である」ということを証明しています。
複素数により、数の概念が直線から平面に
複素数とは実数と虚数を組み合わせた数のことです。複素数にはどのような特徴があるのでしょうか。
例えば、実数を表すには直線だけでこと足ります。実数を横のx軸として考えると、正の方向と負の方向の2方向だけで表現できます。ここに虚数を縦のy軸として加えてみると、直線から平面になります。つまり複素数で平面上の座標を表せるようになったわけで、数の概念が大きく広がったことを意味します。このように実数と虚数を組み合わせた複素数により、高次の複雑な方程式も解けるようになったのです。
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筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 障害者支援研究部 講師 田中 仁 先生
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