見やすく、わかりやすく、使いやすい、安全安心デザインに必要なこと
人間は情報の8割を視覚から得ている
人間は、外界の情報の8割以上を、視覚を通じて取り込んでいると言われています。機器を用いて、ある状況における人間の眼球運動の様子を計測すると、人間が何をどう見て、どう理解し、それをどのように行動に結びつけているのか、ある程度把握できます。身近にある製品やパッケージ、インタフェースなどをデザインする際は、こうした計測に基づく情報も有効です。
医薬品包装デザインに求められること
薬剤師や看護師の医薬品調剤時の眼球運動を計測すると、医薬品名が記載された処方箋や医薬品が格納配置された棚や表示ラベルへ目が向けられているのですが、その多く(7割以上)は医薬品包装を注視してクスリを識別、特定していることがわかりました。そうだとすれば、包装シートだけでどれが何の薬なのか、はっきりとわかりやすく識別できるデザインにすることが必要です。クスリの包装シートの場合、薬機法などの法律でさまざまに表示方法が定められているので、決められたコストの範囲内で実現可能な仕様にしなければなりません。さらには、指の力の弱い人や指先の神経感覚が機能低下する高齢者の方にも容易に開封しやすく(シニアフレンドリー)、一方で手の届く場所に置かれていたクスリを子供が誤飲する事故も起きているので、容易に開封出来ない工夫(チャイルドレジスタンス)も求められるなど、視覚的デザインを含めてクリアしなければならない条件が数多くあります。
人間の特性を理解してデザインに組み込む
さまざまな技術が発達した現代社会では、ともすると、より性能や品質のいい製品を作ろう、という考えにとらわれがちです。しかし、私たちが本当に必要とする製品の多くは、安全で、安心して、快適な見やすく、わかりやすく、使いやすいものでもあるべきです。人間の特性を理解してそれをデザインに組み込むことは、そのために欠かせない一歩となるのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
玉川大学 工学部 デザインサイエンス学科 教授 三林 洋介 先生
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