「らしさ」をデザインする
あの「過去問」がリニューアル
多くの人が思い浮べる過去問題集と言えば「赤本」でしょう。さまざまな大学の「過去問」がそろうこのシリーズは、特徴的な表紙の色からこの通称で親しまれてきました。出版社には、良き相棒として受験生を支える本でありたいという思いがありましたが、高校生からは「威圧感があっていかめしい」「乗り越えなくてはならない壁のようなイメージ」といった意見がありました。そのため、創刊70年を機に20年ぶりの表紙のリニューアルを行うことになりました。
「赤本らしさ」とは何か
リニューアルといっても、まったく異なるデザインにしてしまうと、これまで培ってきた赤本のイメージが損なわれてしまいます。そこで、まずデザインの要素を細かく分解して「赤本らしさ」がどこにあるのかを探します。結果、表紙のデザインには「赤地に黒いゴシック体の大学名」「中央寄せの配置」「上部の帯状の差し色」「四角と幾何学模様」という要素を残しました。これらの要素を「らしさ」として残しながら、「文字の変形を少なく」「密度を低くして読みやすく」「空白を設けて風通しをよくする」などの方針を立てて、新しいデザインにつなげました。例えば上部の帯状の差し色は、従来の金を使用した2色から爽やかな1色に変更し、かつ帯の上に重なっていた文字をやめることで軽やかなイメージに仕上げています。
ブランディングとは
企業や商品の独自の価値(=らしさ)を確立していくことが「ブランディング」の仕事です。見た目のデザインを統一することだけではありません。ビジョンなどを目に見える形に可視化する「ビジュアルアイデンティティ」、思いを言葉にして伝えていく「マインドアイデンティティ」、実際の行動や態度としての「ビヘイビアアイデンティティ」を一貫することが必要で、思想や世界観がみんなに理解され、共感を得られることが重要です。同じ人が違う服を着ていても、印象が全く違うものにはならないように、デザインも見た目が違っても「受ける印象」を統一することが大切なのです。
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