日本の音・音楽・和楽器を通した「日本らしさ」
雅楽「管絃」は世界最古のオーケストラ
オーケストラとは、管楽器・弦楽器・打楽器の楽器を組み合わせて演奏する合奏形態です。西洋音楽のオーケストラは18世紀中頃から発達し、今から約250年前のベートーヴェンの時代、現代の編成に定型化しました。一方で、「吹物・弾物・打物」の器楽合奏として演奏する日本の雅楽「管絃」は、5世紀前後に大陸から伝わり、日本特有に発達しながら、平安時代には現在の形式に整えられました。龍笛、篳篥、笙、楽箏、楽琵琶、鞨鼓、楽太鼓、鉦鼓による楽器編成、演奏法、装束など、日本では現在も約1300年前から変わらない形式で演奏され、受け継がれています。雅楽「管絃」こそが、世界最古のオーケストラと言えるでしょう。
三味線の伝播と匠み
日本の絃楽器である三味線も大陸から伝わった楽器です。中国の「三弦(サンシェン)」が、室町時代、琉球に伝来して「三線(サンシン)」となり、その後、大阪に伝わると、琵琶法師の影響のもと、様々な改良がなされ、日本独自の「三味線」になりました。大阪では、人形浄瑠璃の勇壮な語りに合わせた太棹三味線に、力強く弾くバチが生まれました。また江戸時代には、歌舞伎に合わせた粋で華やかな音の細棹三味線が、さらに明治初期の東北では、繊細ながら力強い音を奏でる津軽三味線が生まれました。日本人は、地域の風土や音楽表現に合わせた匠みな工夫と自由な発想で多様な音色を生み出してきたのです。
日本らしい音
和楽器には、日本の風土、歴史、文化、精神が宿っています。例えば、箏の音色は日本の四季折々の自然の美しさを表現し、尺八の響きは心の奥深くに染み入るような閑けさをもたらします。そして日常生活に耳をすますと、「日本らしい音」を聴くことができます。風鈴の涼しげな音、ししおどしの醸し出す響きと間、心が浮き立つ祭り囃子の音や賑わい、そして竹林の揺れる音など、自然の音にも日本らしさがあふれているのです。こうした音を通して、日本の音楽文化を再確認し、その深い魅力などに誇りを感じ取れるのです。
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玉川大学 芸術学部 音楽学科 教授 清水 宏美 先生
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