「異質な」ものとどう共生するか?

「異質な」ものとどう共生するか?

日本社会になくてはならない外国人

日本の農業・建設・食品製造などの分野で、多くの外国人技能実習生が働いています。本来は自国へ技能や技術を継承するために来ているのですが、現実は労働力不足の日本になくてはならない大切な働き手になっています。技能実習生は、過酷な環境で最低賃金レベルで働き、最長5年間の滞在で転職もできません。しかし、雇う側の日本人には「技能を実習しに来ているし、自国よりは多く稼げるのだから」などと言って、待遇改善に消極的です。これから特定技能2号外国人制度の対象が拡大し、家族連れで長期間滞在する人が増えるでしょうが、このままでは移民の貧困世帯が増えて、日本社会に溶け込めない不満から犯罪が増加し、治安が悪化する、という声が現場からあがっています。移民の問題には、自分たちとは違う「異質な」人を差別して排除しようとする、社会の側面が現れているのです。

動物なのに人と共生するペット

反対に、社会には「異質な」ものを受け入れる側面もあります。例えばペットです。動物は人間とは違う生物で「異質な」ものだと言えますが、ペットを飼っている人たちは「自分の家族」という主観を持ち、まるで自分の子どものように世話をしてかわいがります。では、ペットは子どもの代わりなのでしょうか。そこで犬の飼い主に調査したところ、「ペットはペット。あくまで動物」という意識の人が大半だとわかりました。人間とは「異質な」動物だと認識した上で、自分の家族として受け入れて共生しているのです。

「異質な」ものが共生する社会へ

「異質な」ものとどう付き合うかは人それぞれです。しかし、その判断の前に、誰もが無意識に「異質な」人やものを差別したり、排除したりしているのではないでしょうか。社会・文化的な男女差をジェンダーと呼びますが、そのジェンダーの視点に立って見渡してみれば、「異質な」ものを差別、排除する仕組みが社会にあることに気づきます。これから多様化が進む社会で、「異質な」ものどうしの「共生」を考えることはとても重要なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

玉川大学 文学部 英語教育学科 講師 藤田 典子 先生

玉川大学 文学部 英語教育学科 講師 藤田 典子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

文化・社会人類学、現代日本社会学

メッセージ

あなたが「普通」「当然」と思っていることは、本当に「普通」で「当然」なことでしょうか。それを見直すために、他者の話を聞く、自分の考えを表現する、会話をする、他国の社会や文化について知るなどの経験を積みましょう。すると自分の脳内情報が増えて多様化し、理解できる情報も増えて解釈の幅が広がり、わからないことが減っていきます。生きる上でも楽になり、こういう例もある、ああいう例もあると困っている人に助言できるようになります。大学ではぜひ、そんな多様な脳内情報を増やしてください。

玉川大学に関心を持ったあなたは

―8学部17学科がワンキャンパスに集まる総合大学!―「全人教育」の理念のもと“「人」を育てる”ことをめざす玉川大学は、8学部17学科の学生がワンキャンパスで学んでいます。61万㎡の広大な敷地には、各学科での深い学びに加え、学部学科の垣根を越えた学びの環境を用意。学外での体験型学修や、「使える英語力」を身につける「ELFプログラム」などの独自プログラムも実施しています。また、2020年4月に利用開始した「STREAM Hall 2019」では、農・工・芸術学部が学部の枠を越えた学びを展開します。