義務なのに負担が大きすぎる? 見えてきた裁判員制度の課題とは
裁判員制度の課題
2009年から始まった裁判員制度は、抽選で国民が裁判員に選ばれ、刑事裁判に参加する制度です。裁判員は裁判官とともに有罪か無罪か、有罪ならどのような刑にするかを判断します。裁判員になることは法律上の義務とされています。
制度発足以来、運用面での課題が明らかになってきました。例えば裁判員制度への理解の問題です。裁判に参加するために休暇をとろうとしたら、裁判員を断るよう勤務先から打診されたというケースもありました。また、冬場に交通機関が雪の影響でストップした場合の対応、宿泊代が高くなる時期は補助金を多くするなど、季節や地域の状況に応じた改善も必要です。
裁判員のアフターケアも必要
裁判員経験者へのアフターケアの重要性も指摘されています。カウンセリングなどの体制は整備されていますが、裁判中に現場の写真などを見た裁判員が急性ストレス障がいを患い、賠償を求めて訴訟を起こした事例もありました。また、複雑な気持ちを何年も抱える人も見られます。例えば、裁判長の話を理解できないまま判決を出してしまった、犯罪名と実際の内容がイメージと違っていた、などその理由はさまざまです。個人の精神的負担が大きいと裁判に参加しようという気持ちが阻害され、制度の継続が難しくなります。そのため裁判員経験者の声を反映した環境整備が求められます。
裁判への関心を未来につなぐ
裁判員制度が始まった当初は、被害者を擁護する厳しい判決が増えると予想されていました。しかし実際には事件によって厳罰化か刑が軽くなるかで二極化していて、被告人の態度などを注視して更生の余地があるかを判断しようとする傾向も見られます。裁判員制度をきっかけに裁判への関心が高まった経験者もいます。しかし、自分が参加した裁判のその後の控訴の有無や控訴審の判決などについて、裁判所からの情報提供はなく、自力で調べなければなりません。制度を通じて高まった社会の裁判への関心を持続させるためにも、裁判についての教育活動や広報活動が求められているのです。
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弘前大学 人文社会科学部 公共政策講座 教授 平野 潔 先生
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