火成岩の分析で明らかになる、地球の過去と現在
火成岩の研究でわかること
地球の深部には、中心核とその周囲を取り巻くマントルが存在します。高温・高圧の環境で固体であるマントルの一部分が物理条件の変化で液状化し、マグマになります。そのマグマが地上に噴出するなどして冷えて固まったものが火成岩です。火成岩の形成年代や化学成分を細かく分析していくと、地球の深部で過去にどのような現象が起こってきたのか、その情報を探り出すことができます。
岩石がそこに存在する理由
マグマが生成する場所は、およそ3つの場所に分けられると考えられてきました。1つ目は、太平洋や大西洋、インド洋などの海底に連なる海嶺(かいれい)と呼ばれる地帯で、プレートが地球表面に湧き上がってくる場所です。2つ目は、プレート同士が出会うところで、一方のプレートが沈み込んでいく、プレート沈み込み帯と呼ばれる場所です。3つ目は、地球深部から直線的にマグマが上昇するホットスポットと呼ばれる場所で、ハワイ諸島やガラパゴス諸島、レユニオン島、アイスランドなど、地球上にランダムに存在します。
最近の研究では、これらの3つのいずれにも当てはまらない場所で、マグマが地表に現れている事例が見つかっています。南米のパタゴニア地方北部にあるソムンクラ台地は、アンデス弧と呼ばれる火山列からかなり離れた超背弧(はいこ)地域にあるにもかかわらず、約4万平方キロメートルの範囲に火成岩の一種である玄武岩が見られます。これは、かつてプレートの回転運動によってマントル遷移層直上部が湾曲した際、マントル遷移層にあった水が吐き出されてマグマができたと考えられています。
地球そのものの過去を探究する
地球科学では、いまだにわかっていない事柄が数多くあります。研究でさかのぼっていく時間のスケールも途方もないもので、100万年前にできた火成岩などは、研究者の間ではごく最近のものと受け止められてしまうほどです。地球の過去を探究する旅は、まだまだ始まったばかりなのです。
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先生情報 / 大学情報
弘前大学 理工学部 地球環境防災学科 教授 折橋 裕二 先生
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火成岩岩石学、地質学、地球化学先生が目指すSDGs
先生への質問
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