一般人の「裁判員」と法律のプロ「裁判官」が裁判で果たす役割は?
重大刑事裁判に国民の視点を反映
2009年5月から日本で初めて裁判員制度が導入されました。裁判員制度の目的は、プロの法律家以外の国民の視点や社会意識を裁判に反映し、司法に対する国民の信頼を高めることです。1つの刑事裁判に6名の国民が裁判員として参加し、被告人の有罪・無罪や、有罪の場合にはどういう刑にするべきかを3名の裁判官と一緒に協議し決定します。裁判員制度の対象となるのは殺人や強盗致死傷、危険運転致死などの重大な刑事裁判ですから、「そんな裁判に素人の一般市民が判断を下してよいのか?」と思う人も少なくないでしょう。
殺人罪に問われるか
例えばこんな事件はどうでしょう。別れ話がもつれたカップルの男性が女性に「一緒に死のう」と嘘をつき、了承した女性だけに毒を飲ませて殺害したとします。この場合、裁判の争点は「男性が殺人罪になるのか同意殺人罪になるのか」となります。この時、実は女性は男性が毒を飲まないとわかっていたのではないか、そもそも女性は毒で死ぬことを知っていたのかなどの事実の問題があります。それに加えて、殺人罪と同意殺人罪を分ける基準である同意とは何かという刑法の解釈の問題によって、男性に対する罪状が変わってきます。
裁判における役割分担
この2つの問題について、裁判員がすべての判断を担うわけではありません。先の例と同様に、裁判の過程は、事実として何が起こったかという「事実の認定」と、どんな法律をその事実にあてはめることができるかという「法律の解釈」に大きく分けられます。刑法をどう解釈するかという判断はプロである裁判官が行い、民間人である裁判員は裁判官と合議しながら、一般の感覚を用いてこれらの事実を裁判官と一緒に明らかにし、事実の認定をする役割を担います。いわば、証拠に基づいて「何があったのか」を明確にするのが裁判員、法律に基づいて「どういうルールか」を考えるのが裁判官の役割なのです。そして大学の法学部では、後者の各法律が「どういうルールか」を学んでいくことになります。
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桃山学院大学 法学部 法律学科 講師 河野 敏也 先生
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