講義No.03428 法学 社会学

裁判員裁判で注目される刑事裁判と刑事訴訟法とは

裁判員裁判で注目される刑事裁判と刑事訴訟法とは

捜査から処罰まで規定されている刑事訴訟法

犯罪が起きると、犯人の逮捕を含めたその犯罪の捜査、起訴、裁判と手続きが進みます。そして裁判で判決が出た後、処分が確定します。この一連の手続きについて定めているのが「刑事訴訟法」です。歴史的にみると、捜査機関が無実の人を逮捕したり拷問をしたりと、国民をしいたげてきた事実もあります。それを防ぐためにも、刑事訴訟法には被疑者や被告人に過剰な負担をかけないよう、特に捜査については細かい規定が定められています。さらに、判決をどのように執行するか、それをだれが責任をもって見届けるかといったことも刑事訴訟法では決められています。

無罪が少ない刑事裁判

検察官は捜査により証拠を集め、ある人がその犯罪の犯人であることは間違いないと判断して起訴します。日本の場合、検察官は有罪判決が出るのが確実だと見込まれる場合でないと起訴しません。これは、有罪か無罪かはっきりしない人を起訴して結局無罪だった場合、その人に大きな負担をかけることになるからです。日本で無罪判決が少ないのはそのためです。それでもときどき無罪判決が出されます。その原因はいろいろ考えられますが、起訴をした検察官と判決を下す裁判官とでは、どの証拠がどれくらい信用できるかなど証拠に対する見方が違うことがあるという点もあげられます。

裁判員裁判によって変わる刑事裁判

刑事訴訟法は、以前ならほとんどの人が一生のうちに接することなく過ぎてしまうような法律でした。しかし、裁判員裁判が始まったことで、一般人も刑事訴訟法に接する可能性が出てきました。将来、もしもあなたが裁判員に選ばれたら、裁判官から必要な刑事訴訟法についての説明を受けるはずです。従来の裁判は、裁判官、検察官、弁護士といった法律の専門家によって運用されていました。これからはそこに裁判員という一般人が加わり、裁判官と一緒に被告人を裁くことになります。刑事裁判は、現在大きな変化の真っただ中にあるのです。

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東京都立大学 法学部 法学科 教授 峰 ひろみ 先生

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メッセージ

今の若い人には、他人の痛みや苦しみなど、内面に立ち入ろうとしない傾向があるようです。しかし、刑事裁判ではこうした人間の内面の弱い部分に直面せざるを得ません。法学部では法律の勉強だけでなく、世の中の出来事や人の心にも関心を持つことがとても大切です。
法律や制度は社会の道具に過ぎません。それらは被害者も被告人も、そして一般国民皆が納得できる結論(判決)を導き出すために使われるべきものですし、一人の怒りや働きかけをきっかけとして変えることもできるものだということを知ってください。

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東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。