ソーシャル・ビジネスが「当たり前」になるためには
ソーシャル・ビジネスの浸透
環境問題などの社会的課題を、企業がビジネスの手法で解決に導く「ソーシャル・ビジネス」は、近年のSDGsの流れもあり浸透が進んでいます。環境問題が注目されたきっかけは1992年にブラジルで開催された地球サミットといわれます。そして日本では、2000年代前半ごろからCSR(企業の社会的責任)への理解が進んだことから、ソーシャル・ビジネスに取り組む企業も増えていきました。
中小企業による先進性
ソーシャル・ビジネスは当初、資金力のある大企業から取り組みが進んでいきましたが、中小企業による先進的な事例もあります。繊維のまちで知られる広島県福山市のエコログ・リサイクリング・ジャパン社(エコログ社)は、1994年からポリエステル繊維の再生事業を手がけています。地元のアパレル企業の経営者が「自社が扱う服をリサイクルしたい」という思いを起点に、リサイクル技術を探すところから始まりました。ドイツ企業がその技術を持つことを知った経営者は、大手商社や繊維会社に「日本でも、企業が環境問題に対応しなければならない時代がくる」と出資を募り、ドイツ企業と技術提携したエコログ社を立ち上げたのです。その後、リサイクルの素材づくりの研究や商品開発を進め、流通ルートを整えて、「企業で不要になった制服を回収し、エコバッグやタオルなどに再商品化したものを回収元の企業に戻す」というビジネスモデルを確立しました。
「当たり前」になるために
ソーシャル・ビジネスには課題も多く、「利益が出るまでに時間がかかる」のもそのひとつです。エコログ社も、事業が軌道に乗るまでに約10年かかっています。研究でも「事業として成功するのは半数ほど」というデータがあります。また、研究者の間では「利益」や「社会的課題の解決」など、ソーシャル・ビジネスの成功の指標についての議論も活発です。ソーシャル・ビジネスが企業にとって「当たり前」になるために、さまざまな事例の研究が進んでいます。
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