講義No.13156 経営学・商学

ソーシャル・ビジネスが「当たり前」になるためには

ソーシャル・ビジネスが「当たり前」になるためには

ソーシャル・ビジネスの浸透

環境問題などの社会的課題を、企業がビジネスの手法で解決に導く「ソーシャル・ビジネス」は、近年のSDGsの流れもあり浸透が進んでいます。環境問題が注目されたきっかけは1992年にブラジルで開催された地球サミットといわれます。そして日本では、2000年代前半ごろからCSR(企業の社会的責任)への理解が進んだことから、ソーシャル・ビジネスに取り組む企業も増えていきました。

中小企業による先進性

ソーシャル・ビジネスは当初、資金力のある大企業から取り組みが進んでいきましたが、中小企業による先進的な事例もあります。繊維のまちで知られる広島県福山市のエコログ・リサイクリング・ジャパン社(エコログ社)は、1994年からポリエステル繊維の再生事業を手がけています。地元のアパレル企業の経営者が「自社が扱う服をリサイクルしたい」という思いを起点に、リサイクル技術を探すところから始まりました。ドイツ企業がその技術を持つことを知った経営者は、大手商社や繊維会社に「日本でも、企業が環境問題に対応しなければならない時代がくる」と出資を募り、ドイツ企業と技術提携したエコログ社を立ち上げたのです。その後、リサイクルの素材づくりの研究や商品開発を進め、流通ルートを整えて、「企業で不要になった制服を回収し、エコバッグやタオルなどに再商品化したものを回収元の企業に戻す」というビジネスモデルを確立しました。

「当たり前」になるために

ソーシャル・ビジネスには課題も多く、「利益が出るまでに時間がかかる」のもそのひとつです。エコログ社も、事業が軌道に乗るまでに約10年かかっています。研究でも「事業として成功するのは半数ほど」というデータがあります。また、研究者の間では「利益」や「社会的課題の解決」など、ソーシャル・ビジネスの成功の指標についての議論も活発です。ソーシャル・ビジネスが企業にとって「当たり前」になるために、さまざまな事例の研究が進んでいます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

弘前大学 人文社会科学部 ビジネスマネジメント講座 准教授 大倉 邦夫 先生

弘前大学 人文社会科学部 ビジネスマネジメント講座 准教授 大倉 邦夫 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

経営学

先生が目指すSDGs

メッセージ

ものごとを一方向だけから見るのではなく、別の角度からもとらえることを意識しましょう。そうすることで視野が広がり、ものごとの成り立ちに対する理解も深まります。また、自分が関心を持つテーマについてはまず、それが書かれた「本」を読むことをおすすめします。インターネット上の情報が断片的なのに対して、一冊の本の中では情報が体系的にまとまっているからです。ちなみに「考えること」については、『知的複眼思考法 誰でも持っている想像力のスイッチ』(苅谷剛彦/講談社+α文庫)がおすすめです。

弘前大学に関心を持ったあなたは

弘前大学は、人文社会科学部、教育学部、医学部、理工学部および農学生命科学部の5学部からなる総合大学で、すべての学問の基礎的領域をカバーしています。
この総合大学という特性を生かして、本学では教養教育と専門基礎教育を重視した教育を行い、これからの社会に対応できる人材を育成することを目的としています。
本学の学生は、歴史と伝統のある文化の香り高い弘前市で学びながら、地域の自治体や企業などと連携し、さまざまな活動に積極的に参加しています。