海底のヨウ素を調べて、地球の物質循環の謎を解く!
人間に必須な元素・ヨウ素
ヨウ素という元素は、人間の健康維持になくてはならない必須元素であり、特に甲状腺の働きなどに作用します。主に魚や海藻から摂取されるので、内陸部に住む人はヨウ素が不足しがちであるとも言われます。ヨウ素は工業利用もされており、近年その需要が高まっています。ただ、資源としてヨウ素を産出する国は主に世界でも日本とチリくらいであり、地球上に大きく偏って存在しているのです。
生物の死骸が鉱床に
日本で採掘されるヨウ素のうちの約8割は、千葉県を中心とした南関東ガス田と呼ばれる天然ガス産出地域のかん水中に、メタンガスとともに存在しています。ヨウ素は、「生物親和性」と言って、生物に取り込まれると体内に吸着しやすい性質を持っています。生物が死んで海底に堆積すると、微生物や地熱によって死骸は分解され、メタンやヨウ素が発生し、それらが長い時間をかけて局所的に濃集し、メタンやヨウ素の鉱床となります。
鉱床・資源の行く末を見る
現在使用されている資源は、現在ある鉱床を掘り尽くしたら枯渇してしまうため、鉱床がどこでどのようにできるのかを知ることは重要です。そこで、ヨウ素が海底でどういう挙動をし、どこにたまっていくのかということを、東京湾のヘドロを調べて解明しようという研究が進められています。東京湾は閉鎖的な水域であるため、酸素が少ない状態になりやすい上に、生活排水などの流入によって、富栄養化し生物数が増えやすい状態にあります。その結果、ヘドロの中には通常の海水の何十倍ものヨウ素がたまることになります。そして、東京湾のヨウ素の蓄積を調べることで、現在そこで起きている物質循環のプロセスの一端を知ることができます。それは、現在使用されている資源がどういうプロセスで蓄積してきたのか、また何十万年後、何億年後という気の遠くなる未来に、資源がどう蓄積していくのかを知るためのヒントなのです。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋資源エネルギー学科 助教 尾張 聡子 先生
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