水害や土砂災害から命を守る! 災害免疫力という新しい考え方
激しさを増す集中豪雨や台風
水環境問題や水害、水の利用システムなど幅広く水に関して研究するのが「水工学」です。このうち防災のテーマは、集中豪雨や台風で大規模な水害や土砂災害が頻繁に起きていることから、社会的に注目されています。雨の多い日本は昔から防災力の向上に努めてきており、例えば山地の河川では自然環境に配慮しながら、災害時の被害を最小限に食い止めるダムが作れないかなどの研究が続けられています。一方、自然災害を引き起こす降雨などの「災害外力」は地球温暖化にともなって年々、激しさを増しています。そのため近年は災害外力の増大に防災力が追い付かない状態にあります。
災害に対しても免疫を高めよう!
人口減少社会ではダムなどインフラの新設・維持には限界があり、従来の防災力では災害外力とのギャップは広がるばかりです。そこで新しく「災害免疫力」という考え方が提唱されるようになりました。これは想定外の災害に遭遇しても柔軟に対応できるよう、病気と同じように「免疫」を高めるという考え方です。
例えば大雨で土砂崩れが起きるのは問題ですが、崩れてしまう箇所もあれば、崩れずに残る箇所もあります。同じ程度の雨が再び降ると、崩れやすい箇所は先の大雨で喪失しているので、それ以上の土砂崩れは起きにくくなります。このような状態は、自然界が大雨に対して耐性(免疫)を獲得した状態だと考えられます。
社会科学の視点も必要
同様に人間も、災害の経験を基にして対策を行うだけでなく、防災意識を高めて日ごろから備えるようになり、万が一災害が起きても早期に復旧できる社会システムを整えるようになります。残念ながら災害をゼロにすることはできませんが、このように広い意味での防災力である「災害免疫力」を高めていけば、環境の変化や災害に対応できる強い社会を築き、人々の命を守っていくことができるでしょう。そのために何をすべきかを考えるには、土木など理系の学問だけではなく社会科学の視点も必要で、幅広い領域で学際的な研究が進められています。
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先生情報 / 大学情報
佐賀大学 理工学部 理工学科 都市工学部門 教授 押川 英夫 先生
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