噴火の履歴から地球内部の営みを探る

噴火の履歴から地球内部の営みを探る

火山の歴史をしるす「岩石」と「地層」

火山周辺に残された岩石や地層から、マグマの性質によって異なる噴火の形式や形態を探ることができます。崖を登って山を越え、噴出したマグマが冷えて固まった岩石を採集するのは、とても骨の折れる作業です。しかし、3000年前と推定される貴重な岩石と出会ったときなどは興奮を隠せません。マグマの熱で周辺の地下水が急激に気化し、高温・高圧の水蒸気となって噴火する「水蒸気爆発」では、熱水、水蒸気、岩石だけが噴き出し、溶岩の流出はともないません。この場合は、周辺の地層に残された火山灰の分布などを調べます。岩石や地層が示すマグマの特徴や、岩石に残された温度や圧力などの痕跡といった地下情報をもとに、火山の履歴を解き明かしていくのです。

火山内部は金属資源の宝庫

火山の地下には、資源として活用できる元素や鉱物資源が沈殿している「金属鉱床」が多く存在すると考えられています。国内の金属鉱床の多くは熱水鉱床と呼ばれるもので、マグマから分離した水や、マグマに熱せられた地下水が周囲の岩石と反応し、金属資源が沈殿するなどして形成されています。火山の地下ではリアルタイムに金属鉱床が作られているということです。人類に有用な資源開発が急務とされる今、火山と金属鉱床の密接な関係が注目されつつあります。

地震と噴火の因果関係

火山の持つ莫大なエネルギーは、私たちに温泉という恵みを与えてくれます。しかし、ときには大きな災害をもたらす場合もあります。長年の研究結果から、エネルギー源であるマグマ溜りの動きにはクセがあることがわかってきました。また地震によって引き起こされる地殻変動が、マグマの活動に大きく影響することも考えられています。地震と火山噴火の関連性を追究しながら、マグマ溜りの動きを監視し、地下で混じり合う現象を検知することができれば、噴火を予測し、防災に役立てることも可能になるのです。

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先生情報 / 大学情報

秋田大学 国際資源学部 国際資源学科 資源地球科学コース 教授 大場 司 先生

秋田大学 国際資源学部 国際資源学科 資源地球科学コース 教授 大場 司 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

火山地質学、岩石学

先生が目指すSDGs

メッセージ

地球の営みに興味のある人大歓迎! そんなあなたは、高校でも地学を熱心に学んでいるかもしれません。しかし地学の知識だけでは地球の営みは解明できません。英語力や国語力、山や崖登りに耐えうる体力も必要です。運動が苦手という理由で高校時代に運動部に入らなかったことを、私は今になって後悔しています。面白さがわからなかった古文の勉強ですが、今は古文書を読み解くときにとても役立っています。無駄なことなど一つもありません。自分の興味を深めるために、あらゆる分野の勉強にしっかり取り組んでください。

先生への質問

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地球を舞台に活躍する資源スペシャリストを養成する「国際資源学部」、教育分野や地域社会における現場実践力を養う「教育文化学部」、地域医療の核となり人々の健康と福祉に貢献する「医学部」、独創的な発想と技術力を育む「理工学部」の四学部が連携し、地域に根ざし世界に発信する教育・研究拠点をめざしています。
四季の彩り豊かなキャンパスでは、日本全国そして世界各国から集った学生がそれぞれの目標に向かい、勉学や課外活動に打ち込んでいます。