人間が予測できない未来を、AIが予測する
未来予測は人間からAIへ
多くの分野で既に使われている人工知能(AI)ですが、今後大きな活躍が期待できる分野は、天気予報や感染症の拡大などの未来予測です。これまで行ってきた未来予測では、過去に起こったパターンを分析して数式に落とし込んだものが使われていました。数式を作る前提としては、過去がパターン化される仕組みを人間が理解する必要がありますが、複雑過ぎる出来事になると仕組みの理解は困難でした。その点、AIは複雑な出来事でも、すべてのパターンをデータに突き合わせることができるため、最適なモデルを作り出すことができます。
「シグナル」と「ノイズ」
しかし、過去に起こったすべてが将来同じように繰り返されるとは限りません。普遍的な出来事のデータ(シグナル)のみが使え、一過性や特殊な要因で起こった出来事のデータ(ノイズ)は予想には使えないのです。そのため、AIはシグナルとノイズを区別するために、1つひとつのデータについてシグナルとみなした場合のモデルを作り、それで予想をした時に事実と合っているかの答え合わせを繰り返します。しかし、世の中にある膨大なデータすべてに対してのモデルを作り、シグナルとノイズとを区別し尽くすには、いくら性能のいいコンピュータを使っても5秒先の予想に数十年もかかってしまいます。どれくらいの効率でAIに解析させるかということは、人間が考えなければならない部分です。
社会問題の解決にAIが挑むには
現在は経済格差の拡大が大きな社会問題になっています。この解決にAIを使うとすると、格差の遠因である金融市場の不安定さや政府の債務を抑えるための経済的な解析をするとともに、収入が多くない人が精神的に満足感を得るためには何が必要なのかといった、精神面からの解析も必要となります。人間の行動や心理に関わることは、ノイズが大きいためにAIによる予測が難しいのが現状です。しかし、それを克服することができれば、AIが世の中により貢献できると考えられます。
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東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 社会情報専攻 教授 瀬之口 潤輔 先生
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