音の「聞こえ方」、「伝わり方」をデザインしよう

音の「聞こえ方」、「伝わり方」をデザインしよう

音波の性質を利用する

音は波で伝わるため、音波と逆の位相の波をぶつけて干渉させることで音を打ち消したり、弱くしたりすることができ、同じ位相の波を当てれば音を強めることもできます。音を打ち消す技術を用いたよい例が「アクティブ・ノイズキャンセリング・ヘッドフォン」で、耳元の一点に逆の位相の波を当てることでノイズを減らしています。

指向性をもつ音の作り方

これを応用し、音を空間で自在に操れたら面白いでしょう。そのためには、スピーカーから音がどう流れ出てくるかを事前に予測し、空間での波の起こり方を立体的にコントロールする技術が必要です。スピーカー1個だけではできないため、複数用意しますが、これを「アレー信号処理」「スピーカーアレー」と言います。各スピーカーに、音の大きさやタイミング、周波数など、それぞれ異なる指示を与えて一斉に出力することによって、ある方向には音が強く聞こえ、ある方向には弱く聞こえるなど、音をコントロールすることができるのです。
この技術をうまく使えば、例えばリビングで父と子が団らん中、子どもは宿題をしていて父親はテレビを見ている場合でも、父親のほうには音がよく聞こえ、子どものほうには聞こえにくいという音響空間を作ることも可能です。

音を閉じ込める研究も

また、スピーカーの音は360度広がり、距離が離れるにつれて消えていきますが、ある位置から先には聞こえないよう、音を閉じ込めてしまおうという研究もあります。つまり、部屋で誰かが音楽を聞いていても、少し離れている人には聞こえないということです。本来聞こえるはずの音を意図的に消すわけですから、そこに残ったエネルギーを別の形で消費させる必要があり、現在、研究を進めていますが、実現すると面白い技術になるでしょう。
国内での、スピーカーアレーの研究はまだ少なく、挑戦しがいのある分野でもあります。音を操るさまざまな技術を提案できれば、それを生かしたコミュニケーションツールの開発にも大いに役立つはずです。

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電気通信大学 情報理工学域 I類(情報系) メディア情報学プログラム 教授 羽田 陽一 先生

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メッセージ

高校では与えられた問題を解く場合が多いと思いますが、大学とは、「自分で課題を見つけ、問題を設定し、自ら解決していく力を身につける場」です。物事の見方もひと通りではなく、別の視点で見たらどうなるかなど、柔軟な思考力を育むことも大事です。こうした力があれば、社会に出て、仮に新しい分野に足を踏み入れたとしても、自分で世界を広げていくことができます。大学では目先の課題を解くだけでなく、汎用的な「研究能力」をぜひ習得してください。

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