AIと医療情報を組み合わせ、臨床工学の「天気予報」を
AIで発展する臨床工学
将来の医療現場では、AIを使った機器が広まると考えられています。臨床工学分野でも、治療に役立つ新たなソフトウェアの研究開発が始まりました。例えばAIと医療情報を組み合わせ、透析患者の血圧を予測するソフトウェアです。
透析治療を受けている患者は尿が出ないため、人工的に水分を排泄させる必要があります。水分を抜くと血圧が下がりやすくなるのですが、急激な血圧の低下は避けなければなりません。事前に血圧が下がりそうだとわかれば適切な予防的な対処ができますが、その判断の多くは看護師や臨床工学技士の感覚に頼っています。そこで透析患者の血圧低下を科学的に分析し、AIを使って予測する研究が行われています。
血圧予報ができる?
血圧の未来予測は、天気予報のようなイメージです。天気予報では過去の気温や湿度、風速などの情報をもとに、「この場合は晴れになる」などの傾向をつかんで未来の天気を予測します。同様に医療現場で蓄積されてきた患者の情報を分析し、血圧の変化を予測しようというものです。ヒントとなる情報のひとつが、ある時間の血圧と、その30分後の血圧の比較です。その差を医学的な定義に当てはめ、「血圧が下がった」と言えるときの患者の状況をAIに学習させます。こうした情報をAIに大量に学ばせれば、「30分後に血圧が下がる」といった予測が可能になると考えられます。
オーダーメードの予測をめざして
医療の未来予測をするときの課題として、症状の変化をモデル化(標準化)する難しさが挙げられます。病気の症状は患者ごとに個人差が出るため、誰にでも適用できる基準作りは簡単ではありません。しかし、予測が100%当たるわけではなくても、ある程度の精度で予測ができるのであれば、治療の手助けになることが期待できます。さらに標準モデルをベースに患者個人の情報を追加学習していけば、より高精度なオーダーメードの予測ができるかもしれません。そのためにも、医療現場で得られる情報の細かな分析が求められています。
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神奈川工科大学 健康医療科学部 臨床工学科 助教 川崎 路浩 先生
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