絶滅した動物たちを甦らせる復元画の世界
サイエンティフィック・イラストレーションとは?
イラストレーションの仕事には、さまざまな分野があります。その中でも特殊な分野として、恐竜など、すでに絶滅した生物の姿を描く、「復元画」というイラストレーションの分野があります。「サイエンティフィック・イラストレーション」、あるいは「博物画」とも言われ、専門家の監修を受け、図鑑や展覧会などで使用するために描かれるものです。
恐竜の研究は日進月歩
恐竜を描くと言っても、恐竜の実物や写真があるわけではありません。発掘された骨格やこれまでに蓄積された科学的データをもとに、その姿を再現していく作業になります。骨格もすべてそろっていれば、全体の姿が想像しやすいのですが、有名なティラノサウルスですら、すべての骨格が見つかっているわけではない、というのが現状です。一部の骨しか発見されていない恐竜の場合は、分類上似た種類の恐竜のデータを参考に、そこから類推して描くことが多くなるため、サイエンティフィック・イラストレーターには、骨格や筋肉のつき方など、古生物の専門的な知識も必要とされます。また、古生物学の研究は、日々進歩しています。例えば昔は、二足歩行の恐竜は尻尾を引きずって歩いていたと考えられていましたが、現在では、尻尾はバランスをとるために持ち上げて歩いていたというのが定説となっています。数年前に描いたイラストが、今では間違いとされてしまうこともあるのです。
科学的根拠に基づいて描く
サイエンティフィック・イラストレーションの仕事は、あくまで科学的根拠に基づいて描かなければいけないので、イラストレーターの思いこみで描かないよう注意が必要です。その中で、イラストレーターのオリジナリティが出せる場所は、色です。恐竜の体の色は、実はまだはっきりとわかっていません。そのため皮膚の色は、イラストレーターの想像力が発揮できる数少ないパートです。復元画の世界は、自由に想像力を広げて描けるイラストとは違い、高い専門性を必要とする挑戦のしがいのある分野なのです。
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