市場の相場を動かすのは「予想」と「うわさ」と「コンピュータ」?
市場相場はどうやって決まる?
通貨の交換比率である為替レートの「1ドル=○○円」という相場は、なぜ毎日変動するのでしょうか? 従来、為替レートには、GDP(国内総生産)やCPI(消費者物価指数)などのマクロ変数が影響を与えていると考えられてきました。しかし検証してみると、短期的な為替レートの動きとの相関関係はあまり見られませんでした。また最近の研究では、金融政策の決定や雇用統計の発表といった政治、経済の出来事がなくても、為替レートは頻繁に変動していることがわかってきました。そこでイギリスのある銀行から得た投資家別の取引データを分析したところ、非常に興味深い結果が得られました。投資家たちは政治・経済を予想する力に長けていて、「予想」に基づいて取引を行っており、彼らの取引が為替レートを動かしていることがわかったのです。
「うわさ」が市場を作る
投資と一口に言っても、株式や先物などさまざまな市場があり、その特徴や制度、投資家層もそれぞれ異なります。しかしどの市場にも共通するのは、投資家が「うわさ」を重要視しているという点です。有名な投資家、ジョージ・ソロスは、その一言で市場が動くといわれるほど多大な影響力を持つ人物です。「ソロスがこの銘柄を買っているらしい」といううわさがひとたび流れると、ほかの投資家たちもそれに追随し、相場が動きます。うわさをいち早く聞きつけることが取引における重要なポイントとなっているのです。
人工知能が取引する?
「予想」も「うわさ」も人間が行う行為ですが、最近の取引ではコンピュータの存在を抜きには語れません。市場に影響する膨大なニュースを人工知能が瞬時に判別し、それをもとに取引まで行う「アルゴリズム・トレーディング」は、今や重要な取引手段の1つです。取引しやすく、質の高いマーケットを作る効果はあるものの、機械任せにする危険性も一部では指摘されています。人間とコンピュータが共存し、どのようにしてより健全な取引市場を作っていくかが今後の課題と言えます。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 経済学部 教授 岩壷 健太郎 先生
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