遺伝子レベルでひもとく、ストレスと免疫の仕組み

遺伝子レベルでひもとく、ストレスと免疫の仕組み

ストレスで身体に変化が起きるのはなぜ?

動物も人も、日々、ストレスを感じながら生活しています。ストレスで体調を崩したり、病気になったりすることもあります。よく知られているように、体内に病原体が入ってくると、それを免疫細胞が認識して抗体を作ろうとします。同様に、ストレスを感じるとストレスホルモンが出て、それを免疫細胞が受け取り、細胞が変化します。その変化により、病気が重くなるなどの影響を及ぼすことがあると考えられています。

免疫細胞の遺伝子が変化する

ストレスによって免疫細胞がどのように変化するのかについて、研究が進められている段階です。既に明らかになっているのは、ストレスによって免疫細胞内の複数種の遺伝子の数が変化することです。その中でも、どの遺伝子が免疫細胞に大きな影響を与えているかを調べるために、マウスを使った研究が進められています。マウスには、アレルギーに対して異なる免疫応答を示す種があります。ストレス応答についても、マウスの系統種による同様な差が見られます。アレルギー反応とストレス応答の両方を調べることで、ストレスによってどのように免疫が影響を受けるかについての知見が得られることが期待されています。

人と動物の健康の礎に

1980年代には、ストレスが身体に影響を及ぼす仕組みは、免疫・内分泌・神経のトライアングルと言われて盛んに研究されていました。その後は下火になっていましたが、現在は、分子生物学のさまざまな手法が開発され、動物実験と組み合わせることで、幅広い研究が可能になっています。例えば、免疫応答とストレス応答の相互関係の研究には、レポーターマウスと呼ばれるネズミが使われます。これはストレスを受けて変化を起こした細胞が光るように遺伝子操作されたネズミです。
人も含めた動物に共通するストレスと免疫の仕組みの研究は、動物医療や畜産はもちろん、人間の健康や製薬など、さまざまな分野の基礎になります。健康社会の基盤造りとして発展していく分野なのです。

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先生情報 / 大学情報

日本獣医生命科学大学 応用生命科学部 動物科学科 教授 有村 裕 先生

日本獣医生命科学大学 応用生命科学部 動物科学科 教授 有村 裕 先生

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動物科学、生物学、分子生物学

メッセージ

今は、自分の直感やイメージに従って、興味を持ったものを追ってみましょう。それが将来にどうつながるのか、社会にどう役立つのかなどは、今はわからなくても構いません。明確な理由はなくても心がひかれるものがあるのは幸せなことです。それを深めるために大学に進学してください。大学のゼミの先生や先輩、同級生などの影響はかなり大きなものです。その中で、自分の興味関心を捉え直せばいいと思います。学びを通じて、やりたいことと社会が必要とすることの重なりが、徐々に見えてくることでしょう。

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本学は、明治14(1881)年に東京都文京区にある護国寺の一隅で開学して以来、生命科学系の最高学府として140年の歴史があります。
獣医学部(獣医学科・獣医保健看護学科)と応用生命科学部(動物科学科・食品科学科)の2学部4学科を置き、高度獣医療への対応、生物多様性の保全、食資源となる産業動物の生産、産業動物飼育環境の整備、食品の安全性の確保などの社会的ニーズに応えていける「生命・環境・食」のスペシャリストを育成しています。