植物にとって香りは生き延びるための重要な武器
植物は香りを使って虫や動物を引き寄せる
植物は自らが生き延びるために虫や動物を利用します。花が受粉する際に大切なのは、できるだけ遠くの花と受粉することです。近い花は遺伝的に似ているので、環境変化や病気が起こるとすべてが死滅する可能性があります。遠くの花と受粉すれば遺伝的な多様性が生まれ、生き延びる可能性が高くなります。
そこで花はいい香りで虫を呼び寄せ、蜜を与えることで、花粉を付着させ遠くまで運んでもらいます。一方、完熟していい香りのする実は虫や動物の食料となります。種と一緒に食べてもらうことで、別の場所で種を排泄してもらい発芽させ、自分のテリトリーを拡大します。
葉から出る匂いは虫を遠ざける
このように花や実の香りは植物にとって重要ですが、実は葉にも匂いがあります。いくつかの植物の葉の表面には匂い袋があり、虫が葉の表面を歩いたり葉を食べたりすると匂い袋が破れます。ミントやローズマリーなどのハーブはいい香りがする植物として知られていますが、虫にとっては嫌な匂いであるためそこから逃げてしまいます。植物は、病気になったり、虫に食べられたりしないために、匂いを作って自己防御しているようです。面白いのは、このような匂いは常に作っているわけではなく、虫や病原菌がやってくると作り出します。生きるためのエネルギーを効率的に使っているのです。
葉が匂いを製造するメカニズム
植物が、虫などが来たことに気づくのは、虫が葉を傷つけたり、虫の唾液を感知したりするためだと考えられます。この情報は、何らかの方法で別の葉にも伝えられます。匂いを作る仕組みはまだはっきりとはわかっていませんが、植物の細胞の中に匂いを製造する酵素と、匂いの材料となる基質の箱が別々にあり、傷つけられると箱がつぶれ2つが混合するためと考えられています。また、傷つけられた付近にある匂い物質を作るための遺伝子の活性が高まることも明らかになっています。植物の香りには、まだ解明されていない神秘が潜んでいるのです。
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