運動能力と骨格筋の関係から見えてくるヒトと動物の特性

運動能力と骨格筋の関係から見えてくるヒトと動物の特性

チーターが地上最速の理由とは?

ヒトや動物の筋肉には、運動能力が速い線維と遅い線維があります。運動能力と骨格筋の関係の研究でその比率を全身にわたって調べてみると、一般的に体重が重い動物ほど遅い線維が多く、速い線維は少ない傾向にあります。
しかし、地上で一番足が速い動物であるチーターが、同じくらいの体重の四足動物たちと比べ、速い線維が特別に多いかというとそうでもありません。そこで骨の構造を詳しく調べてみると、チーターは高速で曲がることができる骨格を持つことがわかりました。チーターが獲物の捕食に成功しているのは、筋肉だけではなく骨格にも理由がありそうです。

ヒトとゾウに共通する筋肉の特性

ゾウは体重が重く、遅い線維が多い動物です。特にゾウの鼻は9割が遅い線維です。遅い線維は、小さい力でゆっくり収縮する特徴を持っています。つまり、小さな力を積み上げることで、微細な筋力調節ができるのです。ゾウが鼻を使って食べ物を口に運んだり、絵を描いたりできるのはそのためです。
ゾウより体重がずっと軽いヒトの体幹や足にも、遅い線維がたくさんあります。なぜなら、直立姿勢で二足歩行をするからで、これはバランス力がないとできません。微妙な力加減を発揮するためには、遅い線維がたくさんある方が有利なのです。そして、細かい道具を作って生きてきたヒトの腕、ここにも遅い線維が多くあります。

遅い線維を持つ方が長寿かも?

ヒトも動物も遅い線維を多く持つ方が、長寿である可能性があります。なぜなら、遅い筋線維は神経線維との接合部が丈夫で、加齢にともなう急激な筋萎縮が起こりにくいからです。筋肉は鍛えなければ加齢にともない萎縮します。野山を駆け巡る動物はともかく、ヒトは直立姿勢、二足歩行に必要な筋肉を鍛えることが必要です。特に、第二の心臓といわれる「ふくらはぎ」を鍛えると、筋肉量が増えて血液循環がよくなることが知られています。

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山口大学 農学部 生物機能科学科 教授 宮田 浩文 先生

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運動生理学、神経・筋生理学

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メッセージ

自分の手が届く範囲の材料で、自分にとって何が面白いかを考えてみましょう。あまりに壮大なテーマに興味を持っても、夢で終わってしまうことが少なくありません。それより手が届く範囲で目標となり得る、熱中できることを見つけて調べていくと、必ず次の世界が開けます。
研究で大成するには、ものすごい信念で生き続けるというイメージがありますが、現実はそうはいきません。周りにある不思議さに目を留め、次へ次へと進む方が長続きし、幅広い研究ができると思います。

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