油をたくさん含む食品を、無性に食べたくなるのはなぜ?
油をとるとドーパミンが脳内で分泌される
とんかつ、まぐろ、ラーメン、ケーキにドーナッツなど、「油脂」を含んだ食品は数多くあります。これらの食品が好きという人も多いでしょう。しかし、純粋な油脂は単体で口にしても味も匂いもしません。なぜ、味も匂いもない油脂が人間の嗜好に影響を与えているのでしょうか。
それは、人間の脳に原因があります。マウスによる実験で判明したのですが、油を摂取すると脳からはドーパミンが分泌されます。ドーパミンは快楽や期待感をもたらす神経伝達物質であり、これにより油脂を含む食品にやみつきになるのです。
舌は「脂肪味」を感じられる?
人間の舌の表面には「舌乳頭」という無数の突起があり、ここに味を感じる「味蕾(みらい)」があります。味を伝える「味物質」が味蕾に入り込むと、内部の「味細胞」に受容され味覚神経につながり、脳に味が伝達されるというメカニズムになっています。味細胞の表面には「味受容体」というタンパク質があり、ここで甘みや苦みを感じているのです。味受容体には、甘み・苦み・うま味・酸味・塩味の5種類が確認されていますが、ここに「脂肪味」を感じるタンパク質もあるのではないかと考えられています。
夢の油が開発されるかも?
なぜ、油脂を豊富に含む食品にやみつきになるのでしょうか。油脂は「タンパク質」「糖質(炭水化物)」「ビタミン」「ミネラル」とともに五大栄養素に含まれています。そして「脂質」と「糖質」と「タンパク質」はエネルギーの元となる栄養素です。中でも「脂質」はカロリーが高く、効率のよいエネルギー源です。そのため、人間が積極的に欲するように、脳がドーパミンを分泌させて摂取するよう仕組まれているのだと考えられます。油脂の存在を脳に伝えるメカニズムについては研究途上ですが、その全容が解明できれば、おいしいのにとりすぎにならない油が開発できると考えられています。
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先生情報 / 大学情報
関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科 講師 安達 真一 先生
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