健康増進に役立つ植物油を探そう
急激に変化した日本の食生活
昭和30年代以降、日本の食生活は急激に欧米化しました。エネルギー摂取量は2000カロリー前後で推移し、さほど変化していないのに脂質摂取量が増大したのです。脂質の中でも植物性脂肪ではなく動物性脂質の摂りすぎが顕著です。それにより肥満や生活習慣病が増加し、大腸がんや乳がんなどの発生頻度も高くなりました。
近年、健康に対する意識が高まり、健康志向の食用油の開発が進み、販売量も年々増加しています。秋田県内の食資源の中に健康増進に役立つ食用油がないかと多角的に研究し、発見されたのがアケビ油です。
体脂肪がつきにくいアケビ油
秋田の郷土史や民俗誌などによると、江戸時代にはアケビの果肉を食べる際に残った種を搾って食用油を製造していました。関東・関西方面では美味で高価な油として珍重されていたと記述されています。アケビ油は輸入原料から作られる安価な大豆油やサラダ油に押され、昭和初期以降まったく製造されていませんでした。そこで、アケビ油を実験的に製造してマウスに与えたところ、通常の食用油を与えたマウスと比較して太りにくく体脂肪がつきにくい特質があったのです。詳しく分析したところ、通常の食用油はグリセロールに脂肪酸3分子が結合したトリアシルグリセロールが主成分ですが、アケビ油の主成分は、アセチル基含有の1,2ジアシルグリセロ-3-アセテート (DAGA)という新しい物質だとわかりました。そのDAGAは消化吸収率の低い食物繊維のような成分のため、体脂肪が付きにくくなることも判明しています。
アケビ油の復活で地域活性化を
アケビ油を製造して健康食品として販売することができれば、秋田県の地域農業の振興と新規ビジネスのチャンスが生まれます。アケビ油製造には、天然アケビだけでは不十分でアケビ栽培の拡大が不可欠です。現在、秋田大学、行政や食品加工会社、農家などが連携し、あきた企業活性化センターの支援を受けながら、アケビ油生産の事業化に向けて活動が展開されています。
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先生情報 / 大学情報
秋田大学 教育文化学部 地域文化学科 地域社会コース 教授 池本 敦 先生
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