エビデンスを蓄積し、より良い作業療法をめざす
実験で最適な方法を探る
作業療法士は、入浴や料理といった日常生活や就労などで必要となる動作を中心に、その人らしい生活の獲得を目的にリハビリを行います。では、例えば脳梗塞などで半身まひになった人に、トイレや食事などをどうサポートしたらいいのでしょうか。
その最適な方法を導きだすために、実証実験をします。半身まひを再現して実際にトイレに行く、食事をするといった動作を検証します。すると、新しい作業療法の発見があります。逆に、これまで良いとされていた定説が覆ることもあります。
再現や体験によって検証
例えば、トイレでのズボンの上げ下げは、不安定な体をどう支えるかがポイントです。半身まひを再現して、実際に壁や手すりをどう使うのか、その時々の重心の変化や必要となる時間などを検証します。
食事では、椅子の座面の傾きやテーブルの高さ、足の置き方などを変えて実験し、どの状態が食べやすいか検証します。椅子の座面を前に傾け、両足を床につけると食べやすくなることが実証されています。
また、健常者が義手を体験するための模擬義手が試作されています。筋肉に力を入れたり緩めたりして動かす義手、他の身体部位を使って動かす義手などがあります。それをつけて動きや機能を検証します。患者さんの歩き方など動きをまねすると、どの筋肉が衰えているのかや動きの難しさがわかります。すると、アプローチ法が見えてきます。こうした実験は、患者の思いを知る疑似体験にもつながります。
エビデンスの蓄積が重要に
作業療法における、実験に基づいたエビデンスはまだ不足しています。患者によって状態が異なるため、一般化が難しい側面もあります。ですが、エビデンスの蓄積は、現状の療法の確認、効果的な療法の確立のほかに、経験の浅い作業療法士でもリハビリを実施しやすくなることにつながります。
自分でできることが増えれば、患者の生活は変わります。科学的に裏付けされた根拠をベースに、その人にあったリハビリをすることで、患者の希望をかなえることに近づくのです。
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先生情報 / 大学情報
関西福祉科学大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 教授 永井 栄一 先生
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