発がん性物質を減らし、生活習慣病のリスクを減らすビフィズス菌

発がん性物質を減らし、生活習慣病のリスクを減らすビフィズス菌

赤ちゃんの腸内に多く存在し、健康を守る

人の腸内には、100種以上、約100兆個もの細菌が生息し、その主要な構成菌の一つが、ビフィズス菌です。1899年にフランスで、健康な赤ちゃんの便から検出され、日本では1977年からヨーグルトなどの食品に利用されるようになりました。赤ちゃんの腸内には多く存在するのに大人になると減ってしまうこと、形状が棒状だけでなくY字型やV字型にもなること、嫌気性の菌で酸素がない腸内環境などでしか増殖できないことなどの基本的性質は、1900年代には既に明らかにされていました。1990年代に、いい微生物を食べることで腸内の悪い微生物をやっつけるという「プロバイオティクス」の考え方が登場し、腸内の悪い菌を減らし腸内バランスを整える効果があって、さらに発がん性物質や生活習慣病のリスクを減らす能力のあるビフィズス菌が、再び注目されるようになったのです。

より簡単に菌を増殖させる方法を研究中

牛乳は、ビフィズス菌を殖やす環境が整っていないので、直接菌を入れても増殖しません。ですからビフィズス菌入りヨーグルトを作る場合、まずヨーグルトを作り、そこに別の場所で培養したビフィズス菌を混ぜるというのが、一般的な作り方です。そもそも、ビフィズス菌は培養すること自体が、なかなか難しいのです。そこで、牛乳に直接入れて菌を殖やす方法はないか、あるいは牛乳に何か菌の増殖の引き金になるものを添加して殖やす方法はないかということが課題となり、どういった代謝をするのか、どのような糖やアミノ酸で増殖するのかなど、ビフィズス菌の基本的性質について見直す研究が行われるようになっています。地道な研究ですが、簡単に菌を培養できるようになれば、より手軽に多くのビフィズス菌入り食品が作れますし、薬やサプリメントの材料としても気軽に利用できるようになります。

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酪農学園大学 農食環境学群 食と健康学類 准教授 村松 圭 先生

酪農学園大学 農食環境学群 食と健康学類 准教授 村松 圭 先生

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メッセージ

自然科学系の研究のおもしろさは、予想外の結果が出ることではないでしょうか。微生物の培養実験は24時間あるいは数日で結果が出るので、失敗してもどんどん試すことができます。微生物については、100年以上前から基礎の研究はされていますが、未知の部分もまだたくさんあります。未知の微生物を探し出して有効なデータが実証できれば、その研究によって病気を克服できるようになるかもしれません。地道な作業ですが、コツコツと研究するのが好きな人にとっては、とてもやりがいのある仕事です。

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北海道の政治・経済の中心都市札幌から快速電車で10分、本学はそこに132haの広大なキャンパスを構えています。世界の人口が増幅を続ける中、40%前後の我が国の食料自給率は、今後ますます問題となるのは確実です。そうした環境下にあって、大地を健やかに育て、健康な食物を育み、それを食して健やかな人が育つ。こうした「循環と共生」をテーマに掲げながら、学生一人ひとりの個性や能力を最大限に引き出せるような教育を実践することを使命と考えています。