魚は生態によって脳のパーツサイズが変化する!

魚は生態によって脳のパーツサイズが変化する!

魚とヒトの脳は同じ?

魚とヒトは同じ脊椎動物の仲間で、大脳、間脳、中脳、橋(きょう:中脳と延髄の間)、延髄および小脳といったパーツは同じです。しかし、そのパーツは魚の生態を如実に反映して、種によって大きかったり小さかったりと多様です。例えば、夜行性のウツボは目をあまり使いません。匂いで好物のタコを探すため、嗅覚を処理する「嗅球」が巨大です。反対に昼間に視覚に依存した行動をするカワハギでは、視覚を受け持つ「視蓋(しがい)」がとても大きいのです。

脳を見ると生態がわかる!

脳を見れば、その魚がどんな生活をしているのかがわかるほどです。その中でとりわけ面白いのが味覚です。ヒトには舌に「味蕾(みらい)」という食べ物の味を感じる器官があり、すべての種ではありませんが、魚にはこれが身体の表面にもあるのです。コイにはその味蕾がヒゲに多数あります。味蕾でキャッチした情報は「顔面葉」という部分に到達するため、コイの顔面葉は大きくなっています。左右にヒゲを4本ずつ持つゴンズイもこの顔面葉が大きいのですが、コイと違うのはこの顔面葉にヒゲに対応した「地図」があることです。つまり、ヒゲAが感じた場合はあっちにおいしいものが、ヒゲBが感じた場合はこっちにというように、その位置がわかるようになっているのです。

シワシワの脳を持つヒメジ

さらにこのゴンズイの上をいくのが高級練り物製品の原料になっているヒメジです。水流によってヒゲを漂わせているだけのゴンズイと違い、ヒメジはヒゲを自ら動かしておいしいものを探すのです。ヒメジの顔面葉はヒトの大脳皮質のように層状構造をしていて、しかもしわが入っています。大量の感覚と運動系の情報を処理するために大きな面積が必要なためと考えられます。
以前は、魚の大脳は嗅覚処理だけにかかわるとされ、「嗅葉」と呼ばれてきました。しかし、実際にはいろいろな感覚が魚の大脳に送られることがわかってきました。魚とヒトの共通点は、調べれば、まだまだたくさんあるかもしれません。

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名古屋大学 農学部 資源生物科学科 水圏動物学研究室 教授 山本 直之 先生

名古屋大学 農学部 資源生物科学科 水圏動物学研究室 教授 山本 直之 先生

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生物学、農学、水産学

メッセージ

生き物が好きな人は野外に出て、たくさん観察してください。そしてそこで疑問に思ったことは、どんどん調べて、掘り下げて研究してほしいと思います。また、気になる生き物があったらとりあえず飼ってみるというのもいいと思います。生き物を飼うといろいろな行動が見られて面白いですし、その面白さをきっかけにまた調べていって……というような繰り返しをすることで、自分で考える力もつきます。身近なのによくわかっていないことが多い魚を、脳を切り口に一緒に研究してみませんか?

先生への質問

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