高齢者の転倒を予防する鍵は、筋力の左右バランスにあり!?
単なる筋力の強さだけが、転倒の要因ではない
高齢者が歩行時に転倒すると、骨や神経を損傷して、寝たきりや車椅子の生活になることがあります。そうならないためには、脚の筋力を鍛えることが大切だと言われています。しかし、転倒を防止するには、単に脚の筋力を鍛えるだけでは足りません。歩行を上手にコントロールするには、地面をとらえる足指の握力が大きく関わっているからです。一定時間の速度変化を示す加速度計などの装置を体に付けて高齢者の歩行分析をしたところ、足の握力の左右差が20%以上あると、歩行時の動揺(ふらつき)が大きくなることがわかりました。例えば、左右の握力の平均値が5だとしても、左5・右5のAさんと、左9・右1のBさんでは、Bさんのほうが圧倒的に転倒しやすいのです。
人間の体はもともと左右非対称
全般に高齢者は若者に比べて、筋力の左右差が大きいと言われています。私たち人間の筋力は、利き手や利き足があるように、もともと完全な左右対称ではありません。若い年代でも5~10%の左右差が体にあると言われています。しかし足は手と違い、歩行やジャンプなどの左右対称の動きが多いので、若い世代では左右差はそれほどありません。ところが高齢になり、筋力が衰えたり、関節を痛めたりして、片側ばかりに重心をかける姿勢や動作を続けることで、筋力の非対称性が強くなるのです。
左右対称の動き、足の握力を鍛える
足ではありませんが、野球選手も投球時に腕を身体側に曲げる動作(内旋)の角度の左右差が大きい選手ほど、肩のけがをしやすいことが知られています。高齢者もスポーツ選手も、日頃から左右対称に体の筋力を使う姿勢や動作を心がけることが大切だと言えるでしょう。さらに高齢者の場合は、足の握力を鍛えるトレーニングが必要になります。理学療法のリハビリテーションでは、足の指でビー玉やタオルをつかむ訓練などを左右均等に行って足の握力を鍛え、転倒予防をめざしています。
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